コンテンツにスキップする
Subscriber Only

中国、生産性向上で経済成長促す-価値観の変化で少子化対策も効果薄

  • 2020年の出生数、1961年以降で最も低い水準-成長モデル調整不可避
  • 産児制限緩和も出生率は低下傾向-社会の価値観変わり成果乏しく

中国・上海で高賃金の仕事に携わるチェン・シアオユさんは今年結婚することを決めたが、子供をもうけることは考えていない。

  ホスピタルオフィスに勤務するチェンさん(29)は、「金銭面のプレッシャーは想像を絶する。住宅ローンに加えて子育て費用まで賄う余裕はない」と話す。

  中国が11日発表した10年に一度の国勢調査の結果によると、新型コロナウイルス禍を巡る先行き不透明感の中で2020年の全国の出生数は減少。大飢饉による混乱に見舞われた1961年以降で最も低い水準にとどまった。

中国の総人口、伸び鈍る-高齢化や都市部の住民増

No Baby Boom

Number of births in China fell to lowest since 1961

Source: National Bureau of Statistics, data compiled by demographer He Yafu

  チェンさんのコメントに加え、日本や韓国、香港、台湾などが経験してきた状況を踏まえると、中国の少子化傾向が変わる見込みは薄そうだ。結果として、中国の総人口は数年以内に頭打ちとなり、世界2位の経済大国には重大な変化がもたらされる可能性がある。

  中国は経済成長が人口動態と足並みをそろえて鈍化しないように自国の成長モデルを変え、年金や医療への支出を急速に増やしつつ、工業セクターの高度化のため企業と政府による高水準の投資を継続する必要がある。

Productivity Boost

China's growth is driven by increasing productivity, not adding people

Source: China National Bureau of Statistics; Conference Board

Note: Labor productivity is calculated as GDP per person employed

  こうした見直しが成功すれば中国は世界一の経済大国となり、今後数十年も世界の商品需要を後押しする一方で、国外の企業にとっては高齢の消費者が広大な市場に発展する可能性がある。グローバル金融機関には大きく積み上がる老後資金が狙い目となりそうだ。

中国、28年に米国抜き世界トップの経済大国に-英民間調査機関

  逆に対応を誤れば、中国は米国を抜くことが一度もできない、あるいは上回ることができたとしてもつかの間に終わる可能性もある。

  ロンドン大学SOASの中国経済・人口動態専門家、ローレン・ジョンストン氏は、「中国は成長戦略全般を人口動態の変化に合わせようと取り組んできた」と指摘。「労働集約型である世界の工場としての中国の役割から脱却しなければならない。中国は資本集約型の成長に移行する必要がある」と語る。

Educating China

China is projected to see a rapid increase in education levels

Source: Wittgenstein Centre for Demography and Global Human Capital

Note: Post-secondary education includes non-tertiary and tertiary education

  中国には人口縮小でも経済成長を維持する2本柱のアプローチがある。まず、定年延長や5億1000万人の農村部住民を都市部にさらに移す措置によって、都市部の労働力減少ペースを抑える方針だ。2つ目の柱は生産性の向上で、新たな5カ年計画では職業教育の改善に加え、科学研究や自動化、デジタルインフラへの投資強化が強調された。

  中国政府は教育水準の向上や女性の社会進出で世帯の規模が小さくなった1970年代から人口減少に備えてきた。「一人っ子」政策で世帯規模の縮小に拍車が掛かった中国では2016年に産児制限を緩和。だが、その後も出生率は下がり続けており、社会通念が変わる中で一段の緩和に動いても効果は乏しいことを示唆している。

Aging China

Elderly population share is catching up with developed countries

Source: Sergei Scherbov, International Institute for Applied Systems Analysis

Note: Chart shows projections for Prospective Old-Age Dependency Ratio (POADR), according to which classifies people as elderly when the average remaining life expectancy in their age group is less than 15 years. Decimal points represent 10% share of population.

  北京で花屋を営むティエン・リジュンさんは子供をもうけるよりも自由に価値を見いだしている。

  ティエンさん(30)は「私はとても幸せな人生を送っている。出かけたいところに出かけ、遅い時間になっても働ける」と話し、「子供をもうけると大変だ。私のライフスタイルの質が確実に下がる」と述べた。

原題:China Bets on Productivity Over Population to Drive Its Economy(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE