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コペルニ、最新テクノロジーで実現したファッション史の歴史的瞬間【2023年春夏 パリコレ速報】

9月30日(現地時間)、コペルニ(COPERNI)はファッション史に名を残す歴史的な瞬間をランウェイで実現した。ショーのフィナーレを飾ったベラ・ハディッドの全身にスプレーされた特殊な液体は、見事なミディ丈ドレスへと変化。業界人たちが最新テクノロジーを駆使した未来型のファッションを見届けた。

コペルニ(COPERNI)が9月30日(現地時間)、最新コレクションを発表し、そのフィナーレの様子が瞬く間にネット上の話題を独占した。クリエイティブ・ディレクターのセバスチャン・メイヤーとアルノー・ヴァイヤンは今季、1000を超えるガラスの破片を刺繍でつなぎ合わせたドレスなど、芸術的でイノベーティブなクリエイションをランウェイに送り出した。

さらに、1キロの金で作られたアイコニックな「スワイプ」バッグも登場した。このバッグはイタリアの金細工職人のガブリエル・ヴェネリによって製作され、バックステージではかなりの数の警備員に見守られていた(バッグは販売の予定はなく、ショーの後は溶かされて再利用される)。シャープなテーラードジャケットは、オンラインゲームの「Roblox」から着想を得たもので、まるでシリアルのボックスをそのまま纏ったような強張ったシルエットがインパクトを放った。

また、メタル製のハードウェアで繋がったパネルドレスや、ショルダーパットの代わりにブラパッドを配したトップなど、アイデアに富んだディテールも目立つ。カットアウト入りの赤いミニドレスは、映画『マトリックス』(1999)に登場する“赤いドレスを着た女”をイメージして作られた。シャープな切り込みが入ったデザインは、シンプルながらもグリッチされた世界観を見事に表現していた。

コレクション名は、デビュー当時のブランド名に由来

本コレクションはコペルニが2015年、デビュー当時に使っていたブランド名に由来し、「Coperni Femme」と名付けられた。テーマは「女性らしさのパラダイムシフト」。ショーの冒頭で披露された無限ループのように交差したバイカージャケットは、19世紀の女性用下着のクリノリンにインスパイアされている。体を締め付けるクリノリンの輪を、デザイナーがモダンにアップデートし、現在の文脈に落とし込んだ。

ファッション史に刻まれる瞬間

しかし、もっとも話題を呼んだのは、クロージングのルックだろう。ベラ・ハディッドが下着姿で登場し、照明に灯された台の上に立った。すると、デザイナーデュオの友人であり、科学者のマネル・トーレス博士が彼の同僚とともにステージに現れ、ほぼ裸のベラの体のデコルテからふくらはぎまで、雪のようなスプレーを吹き付け始めた。皮膚に付着した時は、液体のような光沢感があったものの、数分経つとしっかりとしたゴム製のファブリックのような見た目へと変貌した。会場内は、化学物質のようなにおいで充満したが、ベラは体中をスプレーされている間も姿勢を崩さず、完璧なポージングを取り続けた。

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スプレーから作られたドレスの土台が完成すると、コペルニのアトリエ職人が登場し、肩掛け紐をオフショルダーに正し、裾に大胆なスリットをその場で切り込んで、見事なミディ丈ドレスを完成させた。その後、ベラは完璧に仕立てられたボディコンシャスドレスでランウェイを闊歩。わずか5分ほど前までは瓶の中の液体が、見事なランウェイピースへと姿を変えたのだ。このシアトリカルなパフォーマンスは、コペルニが作り出したファッションの錬金術だった。

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Photos: GoRunway.com Text: Luke Leitch Adaptation: Sakurako Suzuki
From VOGUERUNWAY.COM