小木"Poggy"基史とクリス・ギブスのファッション談義

小木"Poggy"基史が、来日中のUNIONのオーナー、クリス・ギブスに直撃インタビュー!ストリートファッション界の大物に、日本のファッションシーンや世界的な流行、そして業界の未来について訊いた。

約3年ぶりの再会を喜ぶ2人。対談中はお互いの思い出話に花が咲き、話が脱線することもしばしば。

小木〝Poggy〟基史(以下 Poggy) 今日はよろしくお願いします。まずは今年4周年を迎えるUNION TOKYOについて聞かせてください。そもそもどのようなコンセプトでスタートしたのですか?

クリス・ギブス(以下クリス) UNIONはグローバル規模で店舗が存在していますが、すべて同じやり方で展開することはできません。LAの店舗が地元のコミュニティを大事にしているように、UNION TOKYOは東京にしかない、たとえば、ソファでゆっくりできるようなアットホームな雰囲気を大事にするなど、それぞれのローカルカルチャーを尊重するようなショップ作りをしています。

Poggy UNIONは当初はニューヨーク、現在はLAにショップがありますが、最近、両都市のスタイルやカルチャーが似てきたように思います。クリスさんはどう思いますか?

クリス LAといえば、歴史的にローライダーやベニスビーチスタイルなどが有名ですが、だいぶ洗練されてきたと思います。アメリカの最新ファッションといえばニューヨークでしたが、ここ数年で生まれたアメリカの人気ブランドはLAから発信されています。ニューヨーカーがLAのスタイルを受け入れることによって両都市はとても似てきたのでしょう。ただ、これはニューヨークとLAに限った話ではないと思います。インターネットが発達したことにより市場がグローバル化され、なおかつトレンド感のある情報を誰もが均等に得られるようになったことで、ファッションが世界的に同一化しやすくなったのだと思います。

Poggy いまUNIONを訪れている若者のファッションを見て、どんなことを感じますか?

クリス ファッションに熱心な若者は、みんなと同じブランドを着るのではなく自分たちで服をデザインし、さまざまなコミュニティと繋がり合っているのです。彼らがどのようにファッションに適応していくのかとても楽しみです。

Poggy たとえば、日本ではMASU(エムエーエスユー)やDAIRIKUなど、最近は20代のデザイナーが出てきています。クリスさんが注目している若手デザイナーやスタイルはありますか?

クリス お恥ずかしい話、まだそこまで知りません(笑)。いまの若者のように、ネットの情報から刺激を受けるよりも、実際に触れたり空気を感じたりすることで情報を得てきた私としては、来日できなかったここ3年はストレスでした。だから今回の旅では新しいデザイナーのアイテムを見て回り、試着して、デザイナーと話すことがとても楽しみです。ちょうど社内ミーティングで、新しい世代の日本人デザイナーを積極的に発掘しようという話をしていたので、あとで色々教えてください(笑)。

Poggy わかりました(笑)。では長年にわたり日本のファッションシーンを見てきたなかで、印象に残っていることはありますか?

クリス 2001年にはじめて来日しましたが、その時に印象的だったのは、ストリートウェアをハイブランドのように扱うことでした。アメリカのストリートブランドのTシャツを、大理石のテーブルの上に美しく陳列していたのを見て驚きました。また、昔から来日するたびに中目黒青山などへ行き、街行く人のスタイルを観察しています。それはなぜかというと、日本は独自のファッション文化を作り上げるだけでなく、ほかの国のファッションを輸入し自分たちの文化として表現している稀有な国だからです。これは日本ならではの特性だと思います。

Poggy 日本には優れたファッションデザイナーがたくさんいますが、どうしたら海外でより評価されると思いますか?

クリス もう十分評価されていると思いますよ(笑)。ハイ・ファッションでいうなら、多くの人が川久保玲を史上最高のデザイナーに挙げるでしょう。またストリート系と呼ばれるネイバーフッド、WTAPSなどのブランドは、ほかの国のものとは比較にならないほどの人気と実力があります。UNIONで扱っている日本のブランドは毎年トップセラーです。いずれのブランドもファッションにとても敬意を払っていて、服作りに対する強いこだわりを持っていることが魅力なのだと思います。

Poggy 新たに進出を検討している大阪のお店について、話せる範囲で教えてください。

クリス 大阪ならではのブランドをセレクトするなど、ローカルな魅力を生かしつつ、みんなが気軽に立ち寄れるような店舗にしたいと思っています。こちらはいま構想中の段階ですが期待していてください。

Poggy いま、話題のメタバースNFTについてはどうお考えですか?

クリス 正直よくわかりません(笑)。もちろんメタバースがどういうものかは理解しています。今メタバースに投資している人たちはプロスペクターだと思いますが、今日では意味をなしません。多くの人がUNIONにNFTを作れと言いますが、私はいつも「それが今、私たちにとって意味があることなのかどうかわからない」と言っています。将来的には可能性があることは理解していますが、まだその段階ではないのです。

Poggy では最後に、LA発のおすすめブランドを教えてください。

クリス (Tシャツを指差しながら)いま着ているこのブランド、RRR123です。旧知の間柄であるリヴィントンロイレビスが手がけているのですが、フィット感やドレープ、あとグラフィックが好きで、ほぼ毎日このブランドの服を着ています。本当にクールなものばかりです。そうだ、今度Poggyにもカタログを見せなくちゃ!

Poggy ぜひお願いします!

小木"Poggy"基史

ファッション・キュレーター

1976年、北海道札幌市生まれ。1997年、ユナイテッドアローズに入社。2006年にリカー、ウーマン&ティアーズ、2010年にユナイテッドアローズ&サンズを立ち上げる。2018年に独立。現在は渋谷パルコ内の2Gのファッションディレクターなどを務めている。

「本当の意味で"自分のスタイル"を手に入れようと思ったら、オンラインを使うだけではなく、実際に店舗へ足を運んで空気を感じ、服を手に取る。そして何よりお店のカルチャーに触れることが大事」とクリス氏。

クリス・ギブス

UNIONオーナー

世界のストリートシーンを牽引しつづけてきた、1989年創業の老舗リテーラーUNION NYでのバイヤーを経て、現在はUNION LAとUNION TOKYOのオーナーを務める。UNION TOKYOの最新情報はこちらから。

www.instagram.com/uniontokyo/

PHOTOGRAPHS BY TEPPEI HOSHIDA 

WORDS BY KEI OSAWA