欧州経済のエンジン、ドイツがリセッション入り-危機乗り越えれるか
William Wilkes、Jana Randow-
われわれは社会として鈍感になっている-BASFのCEO
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ショルツ首相は1月、今年のリセッションは回避できると話していた
ドイツは何十年もの間、欧州経済のエンジンとして次々と起こる危機を乗り越えてきた。しかし、その回復力が失われつつあり、欧州大陸全体でリスクが高まっている。
エネルギー政策の欠陥や内燃機関を動力とする自動車時代の終焉(しゅうえん)、新しいテクノロジーへの移行の遅れなどが重なり、ドイツの繁栄は1990年の東西ドイツ統一後で最も根本的に脅かされている。
しかし、90年当時とは異なり、国の競争力の根幹を揺るがす構造問題に取り組む政治家のリーダーシップは感じられない。
欧州最大の化学品メーカー、独BASFのマーティン・ブルーダーミュラー最高経営責任者(CEO)はブルームバーグに対し、「何も問題がないように見えるので、われわれは社会として鈍感になっている。ドイツが抱えるこうした問題は積み上がりつつある。われわれの前にあるのは変化の時代だ。国民一人一人がこのことに気付いているかどうかは分からない」と話した。
ドイツ政府はこれまで、危機克服で手腕を発揮してきたが、今問われているのは、持続的な戦略を追求できるかどうかだ。その見通しは立っていない。
ショルツ首相が率いる連立政権は、エネルギー不足のリスクが緩和されるやいなや、負債や支出、ヒートポンプや速度制限に至るあらゆる問題でつまらない内紛に逆戻りしてしまった。
ただ、警告のシグナルは無視できないものなりつつある。ショルツ首相は今年1月、ドイツはロシアからの供給に頼っていたエネルギーの不足を乗り切り、今年リセッション(景気後退)に陥ることはないだろうとブルームバーグに語っていた。
だが、実際には昨年10月から今年3月まで2四半期連続で国内総生産(GDP)が縮小し、リセッションに陥っていたことが、25日発表されたデータで分かった。過去5四半期でGDPが前期比プラスとなったのは2回だけだ。
ドイツ、リセッション入り-1~3月GDP0.3%減に下方修正
エコノミストらはドイツの経済成長が今後何年も域内の他の国に後れを取るとみており、国際通貨基金(IMF)はドイツが今年、主要7カ国中最も低い成長率にとどまると予想している。
それにもかかわらず、ショルツ首相はまだ楽観的だ。最新統計の発表後、「ドイツ経済の見通しは非常に良好だ」と強調し、マーケットの力を引き出し、行政の効率化を図ることで「われわれは直面する課題を解決しつつある」とベルリンで記者団に述べた。
原題:Europe’s Economic Engine Is Breaking Down (1) (抜粋)