【Craft Inn 手】伝統工芸が集積する九州の町でクラフト文化に触れる
福岡県八女市とその周辺は、九州最古の歴史を持つ和紙から、岐阜と並び生産量日本一を誇る提灯や久留米絣、仏壇、竹細工、日本酒や八女茶まで、多種多様な伝統工芸が集積する全国的にも稀有な地域。伝統的な建築物が並ぶ一角に建つ、クラフトイン 手(Craft Inn 手)は、そんな八女のクラフト文化を体験できる宿だ。
提灯や竹細工、桶作りなどの工房が残る八女の旧市街を歩く町歩きに始まり、職人が手作りした道具で楽しむ八女抹茶のほか、隣接する筑後市の工房で、くくり・藍染・織りを全て体験しながら1日で久留米絣を織り上げるプログラムもある。この宿の魅力は、代々この町に住み、伝統を大切に守り続けるプロから学べることだ。
古民家を再生した2棟3室の客室は、藍の部屋、竹の部屋、和紙の部屋と名付けられ、オリジナルの家具や調度品、卓越した職人芸の木桶の風呂などを備える。食でも地元をとことん体験できるようにと、朝食には八女茶や地元の野菜やフルーツをふんだんに使い、夕食は地元の人気店の鴨鍋料理「葉山」と提携するなど、ローカル感あふれる近所の料理店を紹介する。
Craft Inn 手
福岡県八女市本町120-1(旧塚本邸)
Tel./0943-25-7577
料金/1人1泊22,200円〜(朝食付・2名1室利用)※2023年2月現在
https://craftinn.jp/
【Bed and Craft】本格派のものづくりが学べる“弟子入り”可能な宿
富山県の南砺市(なんとし)は、2メートルにも及ぶ積雪に包まれる合掌づくり集落の五箇山で知られている。加賀藩の手厚い保護で発展した“五箇山の和紙”、荒彫りから仕上げまで200本以上の道具を駆使する“井波の彫刻”、明治時代には9割の家庭に手織機があったという“城端の絹織物”など、伝統工芸が盛んな地域でもある。なかでも彫刻の町として知られる井波地区で、“職人に弟子入りできる宿”として人気なのが、ベッドアンドクラフト(Bed and Craft)だ。
ベッドアンドクラフトは、元建具屋のタテグヤ(TATEGU-YA)、養蚕業で栄えた豪商の邸宅だったタエ(taë)、格式高い料亭をリノベーションしたキンナカ(KIN-NAKA)など、それぞれにユニークな6つの古民家の宿からなる。いずれも貸し切りで1日1組限定だ。
木彫刻家・田中孝明の指導による、3時間にわたる木彫りのスプーン制作にはじまり、漆芸家・田中早苗の手ほどきで、2泊3日の滞在を3回重ね、1年間で漆の椀を作り上げるコースまで、どれも本格派の体験プログラムを用意している。“弟子入り”という言葉が示す通り、ワンランク上の中味の濃い体験が可能だ。
Bed and Craft
富山県南砺市本町3-41(BnCラウンジ)
Tel./0763-77-4138
料金/1室1泊38,000円〜(朝食付・2名1室利用)※2023年2月現在。ワークショップは要予約・別途料金(1人10,000円~)
https://bedandcraft.com/
【Zenagi】木曽の自然と職人の技が詰まったラグジュアリーな古民家リゾート
長野県南木曽のゼナギ(Zenagi)は、江戸時代の豪農の邸宅だった築300年の古民家を再生した1棟貸し切りのプライベートリゾート。オールインクルーシブ、プライベートバトラー&シェフなどのサービスに加え、コンシェルジュがゲストのリクエストを聞いて設計する、テーラーメイドの旅にこだわる。
客室には剣持勇コレクションの椅子、トムディクソンの照明などを配し、洗練されたモダンな空間を創り上げている。一方で、釘を1本も使わずに柱や梁を組み合わせて構成したロビー、3室の個室に置かれた木曽ヒノキの大きな風呂、木曽の職人が作った木製のオリジナルチェアなど、滞在するだけでアーティスティックな職人技に触れることができるのだ。
森林浴、星空観賞、川下りやパラグライダーなどの自然をとことん味わえるアウトドアアクティビティとともに人気なのが、職人体験「木地師との器づくり」だ。木曽地方で、平安時代から脈々と続く木地師とは、ろくろを回して木を削り、木の皿や椀を作る職人のこと。その素晴らしい技を工房で間近に見ることができるとともに、蒔絵作りにもチャレンジできる。
Zenagi
長野県木曽郡南木曽町田立222
Tel./090-6072-8392(予約コンシェルジュ)
料金/1人1泊157,300円~(2食+1体験付・2名1室以上)※2023年2月現在
https://zen-resorts.com/
Text: Yuka Kumano Editor: Saori Asaka