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ケイト・ブッシュ「神秘の丘」が『ストレンジャー・シングス 未知の世界』効果でヒットしている

『ストレンジャー・シングス』シーズン4をきっかけに、1985年発表の超印象的なシンセポップが、Spotifyなどのチャートで急浮上している。

映画やテレビの音楽を選曲することは、一種のアートだ。素晴らしい選曲は深く記憶に残り、ポップカルチャーとの関連性をいちだんと高めて、楽曲とシーンの両方をトップクラスへと押し上げる。映画『レザボア・ドッグス』で流れる英バンド、スティーラーズ・ホイールの曲「Stuck in the Middle with You」。映画『恋はデジャ・ブ』に登場するソニー&シェールの曲「I Got You Babe」。そして、もちろん、覚えている人は覚えているコレ、海外ドラマ『THE O.C.』シーズン2のフィナーレに使われた、嘘・偽りなく本当に超最高な1曲、イモージェン・ヒープの「Hide and Seek」などが例として挙げられる。

「神秘の丘」を歌うケイト・ブッシュ(中央)。1985年。United Archives/Getty Images

80年代を舞台にしたドラマ『ストレンジャー・シングス』はノスタルジアを誘引する新時代の人気作だが、そのシーズン4はテレビ音楽の殿堂入りを目指して大きく舵を切り、見事に成功した。シーズン4は全9話の2部作構成となっているのだが、ケイト・ブッシュが1985年に発表したエネルギッシュで印象的な曲「神秘の丘」(原題:「Running Up That Hill (A Deal with God)」)は全7話から成るシーズン4の第1部を通して、何度か登場している。シーズン4の配信が始まった先週末、「神秘の丘」は急速にチャートを駆け上り、米iTunesチャートで1位を獲得。6月1日のSpotifyチャートのTOP200デイリーランキングではUS、UKともに1位に躍り出た。

爆音の「神秘の丘」でモンスター撃退

以下、軽いネタバレが含まれているので、注意。

この新シーズンでは、田舎町ホーキンスに居続けているティーンたちであるダスティン、スティーブ、ナンシー、マックス、ルーカス、ロビンが、人の心の中に侵入し、ある種の悪夢を目覚めさせ、犠牲者をそこへ追い込んでしまう“裏側の世界”の新モンスターに脅かされる。臆病な大型犬のスクービー・ドゥーが飼い主を含む人間4人と、行く先々で遭遇するモンスター絡みの怪奇事件を解決していく『スクービー・ドゥー』のスクービー・ギャングのような手法で調査した結果、彼らはあることを発見する。

Netflixシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン4 Vol.1:独占配信中、Vol.2:7月1日(金)独占配信開始Courtesy of Netflix

このモンスターの男は、テレキネシス(念力)を駆使して、ターゲットの全身の骨を折り、眼球をつぶす。身を守る唯一の方法は、モンスターが行動を起こそうとしているときに、ターゲットとなっている人間のお気に入りの曲を爆音で鳴らすことだと、みんなは気づく(ベタすぎると思うかもしれないが、ドラマではそれほど安っぽくは感じない。本当だ)。だから、マックスがもう少しでモンスターにやられそうになったとき、その命を救ったのが「神秘の丘」だったというワケ。センスいいね、マックス。

Netflixシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン4 Vol.1:独占配信中、Vol.2:7月1日(金)独占配信開始Courtesy of Netflix

この曲は劇中、何度か耳にすることになるが、『ストレンジャー・シングス』ファンの心に「神秘の丘」という曲を永遠に刻み込んだのは、第4話「親愛なるビリー」の壮大なエンディングのシーンだ。“表の現実世界”で、マックスは死んだ義理の兄ビリーの墓の前で、彼に宛てた手紙を読み上げる。その時、マックスはモンスターに襲われる。駆けつけた友人たちは、意識を失っているマックスのカセットプレーヤー「ウォークマン」のヘッドフォンを彼女に装着したまま再生ボタンを押す。

夢のごとき“裏側の世界”で、打ち続けるドラムと軽やかにさえずるシンセサイザーが鳴り響く。マックスは、周囲に瓦礫が降り注ぐ地獄のような風景のなかを、命懸けで全力疾走している。これぞまさに「天国で引き合わされた、最高の組み合わせ」だ。未見の人も、もう見たという人も、「神秘の丘」の歌詞に注目しながらチェックしよう!

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン4 VOL 1は、Netflixで独占配信中。

FROM: BRITISH GQ  Translated by Mayumi Horiguchi