株式分割が倍増の勢い、個人望む「投資単位50万円」の未達企業は残る
横山桃花、我妻綾株式分割を決めた企業は前年比で倍増する勢いだ。2024年から拡充する少額投資非課税制度(NISA)に向けた動きで株式市場としては歓迎できるものだが、最低投資金額が十分下がっていない企業が多く、上場企業の対応は道半ばだ。
ブルームバーグのデータ集計によると、23年に株式分割の実施を発表した企業は6月30日時点で82社。前年同期間の44社から2倍近くに増えた。企業にとって株式分割は、少額からの投資を望む個人などを呼び込み新たな株主の確保が可能になる。
増加の背景には、株主の裾野を広げたい企業の事情もある。企業間の株式持ち合いの解消が進み、安定株主が減った企業は株主層を厚くする必要に迫られている。新NISAが始まる24年からは、企業は個人投資家からのマネー流入を期待できる。
株主分割は株高効果ももたらす。23年6月までに発表した企業を対象にブルームバーグが集計したところ、平均で発表1カ月後のTOPIXに対して5ポイントほどアウトパフォームしていた。
50万円の壁
日本における売買単位は100株のため、個人投資家は投資しづらい環境にある。1株から購入できる米国株に比べて最低投資金額が高額になりやすいからだ。個人でも投資しやすい環境整備を推進する東京証券取引所上場部は投資単位の引き下げに向けた働きかけを続ける方針だ。
株式分割による投資単位の引き下げ幅は不十分だ。東証のウェブサイトによると、3月末時点で全上場会社のうち5.4%に当たる204社の投資単位は東証が要請する50万円を超えている。21年から23年までに株式分割を実施した企業のうち、20社は分割後の投資単位は50万円をなお超えている。
大和証券の阿部健児チーフストラテジストは、今後は投資単位が50万円を超える値がさ株などでさらなる分割が見込めると指摘する。
個人投資家の求めに応える東証は投資単位の引き下げを上場企業に要請するが、新NISAの開始は投資枠の拡大で高額な最低投資金額を正当化できるという見方もある。
これまでの一般NISAの年間投資枠120万円は、衣替えにより「成長投資枠」の240万円へと倍増する。このため東海東京調査センターの仙石誠シニアエクイティマーケットアナリストは、上場企業が新NISA需要を取り込むには投資単位を240万円以下に抑えられれば良いという発想ができてしまうと語った。