BEAUTY / WELLNESS

「自律神経が乱れる」ってどういうこと?【美容のモヤモヤをすっきり解決】(前編)

美容や健康にまつわる“ハテナ?”を解消する同連載の第2回は、自律神経にフォーカス。頭痛、だるさ、めまい、鬱っぽさetc.、数多の不調を整えるカギとなる自律神経の正体についての説明をまずこの前編で解説。続く後編では具体的な捉え方と、整え方についてレクチャーする。

そもそも、自律神経って何か知ってる?

睡眠更年期障害からちょっとした体調不良まで、あらゆるテーマで引き合いに出されがちな「自律神経の乱れ」。言葉は日常的に聞くけれど実態がつかめないし、あらゆる心身の悩みがそこにたどりつくブラックボックスのように感じている人もいるのでは?そこで、臨床の現場で自律神経にまつわるトラブルに日々直面するドクター2人に、自律神経の基本の「き」をクリアに解説してもらった。

自律神経は自分の意思とは無関係に、さまざまな機能の恒常性を自動的に維持する役割を担っている。Photo: iuphotos/123RF

「形としてに見えにくいし、マジックワードのように扱われていますが、自律神経とは脳から脊髄を通って全身に張り巡らされている神経のことです。自律神経には興奮モードである交感神経と、鎮静モードの副交感神経の2種類があり、内臓や血管などの働きを調節しているんです」。そう教えてくれたのは、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司先生。すべての臓器につながり、血圧や脈拍、呼吸などをコントロールし、生命維持に関わる大切な役割を担っている存在なのだ。

そんな自律神経の問題を解りにくくしている理由のひとつが、自律神経の乱れにまつわる症状が多岐にわたり、しかも特効薬がないという箇所。「婦人科で扱う不定愁訴から耳鼻科で診るめまい、心療内科の分野でいうとうつ症状など、さまざまな不調・トラブルが自律神経失調症と呼ばれますが、実のところ医学的な正式名称としてそういう病名はないんですよ。当院では、その根っこにある原因は何かを探って治療します」(精神科医・市川メンタルクリニック院長 芦澤裕子先生)

ちなみに、巷には自律神経のバランスを測定する機械などもあるが、おふたりのクリニックでは採用していないそう。「心拍や脈などから判定しているのだと思いますが、測定時にリラックスしているかどうかで数値が全く変わってしまうので。それよりも疾患がないかをきちんと調べることで治療につなげることができます」(芦澤先生)

全機能にくまなく影響する、自律神経。だからこそ機嫌よく働いていて欲しいが……。

「睡眠時間の理想は8時間。毎朝決まった時間に起きるのも自律神経を整える秘訣です」(芦澤先生)Photo: Adene Sanchez/Getty Images

Adene Sanchez

自律神経外来を創設し、「現代人の9割は自律神経が乱れていると思います」と語る久手堅先生に、そういった乱れがなぜ生じてしまうのかを聞いた。

「自律神経はシーソーのようにバランスをとりながら、24時間365日働いています。交感神経と副交感神経のスイッチの切り替えが大切なのですが、精神的なストレスや不規則な生活が続くとオンオフの自動調整機能がうまく働かなくなるし、温度差や気圧の変化といった気候や環境の影響を受けやすいのも自律神経の特徴です。また、コロナ禍での精神的・経済的な負担の増加や、リモートワークで歩かない・陽射しを浴びないといった生活の変化を受けて、若い世代にも自律神経の乱れにより不調を起こす人が増えています」

また、睡眠時間の短さに警鐘を鳴らすのは芦澤先生。「寝不足だと心身の回復が遅くなりますし、神経もきちんと働いてくれません。特に日本人は世界の先進国の中でも1、2を争うほど睡眠時間が短い。睡眠外来では6時間未満だと寝不足とされますが、自律神経を整えるには7時間以上欲しいですね」

あなたの自律神経は大丈夫? 乱れる理由を学びつつ、セルフチェック。

自律神経の乱れは、ちょっとした不調から始まる。眠りが浅い。頭痛に悩まされている。疲れが抜けない。便秘がちor下痢がちである……などと聞くと思い当たると思う人も多いのでは? まずは、以下に紹介する12の項目(※)をチェックし、自分に該当するケースをカウントして欲しい。

  • 朝起きるのが辛く、目覚めはすっきりしない
  • 眠れない/寝ても疲れがとれにくい
  • いつも疲労感やだるさがある
  • 慢性的な肩こり・首こりがある
  • 頭痛やめまいが起きやすい
  • 胃もたれ、食欲増減、便秘など胃腸の不調がある
  • のどが詰まっているように感じる/違和感がある
  • 動悸や胸のざわつき、不安感、息苦しさがある
  • イライラ・もやもやしやすく気分が落ち着かない
  • パソコンやスマホを長時間使用する
  • 運動(筋トレを除く)をあまりしない
  • 天気(気圧、寒暖、湿度)の影響で不調が起きやすい

YESが4つ以下ならおおむね良好だが、5〜8つならメンテナンスが必要。9つ以上当てはまるという人は自律神経がかなり乱れているので即メンテナンスが必要だ。さっそく、自律神経を整えるコツをみていこう。

※…『気象病ハンドブック』(誠文堂新光社・2022年9月5日発売予定)より

自律神経を整えるための、5つの基本。

ここで大切なのが、「自律神経のケアは地道な努力の連続」(芦澤先生)ということ。「遺伝要因よりも環境や生活習慣の影響のほうがはるかに大きい。早くても2カ月、だいたい半年くらいで変わってくるものと考えてください」(芦澤先生)

また、いきなり100点を目指してがむしゃらに頑張らないマインドも大切だそう。「完璧を求めると交感神経が優位になり、緊張モードになってしまいます。そもそも自分の意思でコントロールできるものではないですし、“自律神経=一生付き合う相棒”ですから、力まずに“ご機嫌をとる”のが大切。70点なら合格という気分でケアしましょう」(久手堅先生)

芦澤先生に基本をうかがったところ「まずは睡眠、栄養、運動の3つを意識して。良い循環が生まれ、心身の回復力が上がります」

さらに、久手堅先生が提案するのが骨格コンディショニングだ。「自律神経は脊髄を通っているから、歪みがあると負荷がかかります。座り方に注意する、座りっぱなしにしないといった日々の姿勢に注意するだけでも、変化が感じられるはず」。また、「姿勢が悪いと肺が圧迫され、呼吸が短く浅くなりがちに。これも自律神経のバランスが乱れる原因になってしまいます。反対に呼吸を改善すると自律神経を整えることもできるんです」と、呼吸の重要性にも触れる。

まずは生活に取り入れられる簡単なものから、少しずつ。自律神経が喜ぶ生活習慣を取り入れれば、あなたのよき相棒となってくれるのだから。

>>後編では自律神経の整う食、それから隙間時間でできる骨格コンディショニング術や呼吸法を医師たちが伝授!

話を聞いたのは……
久手堅司
せたがや内科・神経内科クリニック院長。日本内科学会・総合内科専門医、日本神経学会・神経内科専門医、日本頭痛学会・頭痛専門医。「自律神経失調症外来」「頭痛外来」など複数の特殊外来を立ち上げ、中でも「気象病・天気病外来」「寒暖差疲労外来」が話題に。近著に『気象病ハンドブック』(誠文堂新光社・2022年9月5日発売予定)。

芦澤裕子
精神科医・市川メンタルクリニック院長。日本睡眠学会認定医、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、指導医。心療内科、精神科のクリニックにて精神障害、睡眠障害の治療にあたる。『GOOD SLEEP BOOK 365日ぐっすり快適な 眠りのむかえ方』(翔泳社)などを監修。

Text: Satoko Takamizawa Editor: Rieko Kosai