日本対クロアチア、前半は“戦術三笘”を温存!守備の冨安健洋、シャドーの南野拓実に期待! 

2022サッカー・ワールドカップ カタール大会1次リーグ、日本代表はE組を1位で突破して世界を驚かせた。ベスト8をかけた次戦は、過去の対戦成績1分け1敗のクロアチアと対戦。キックオフは日本時間12月6日午前0時だ!
日本対クロアチア、前半は“戦術三笘”を温存!守備の冨安健洋、シャドーの南野拓実に期待!
José Méndez

過去の対戦成績は1分け1敗

こんなに番狂わせが連続するワールドカップはなかなか記憶にない。最大の驚きは日本代表のE組1位突破。ドイツとスペインに逆転勝ちとは、贔屓目に見ても、奇跡だ。

ノックアウトシステムの1回戦、日本代表初となる「ベスト8」の壁として立ちはだかるのは、グループFを2位で突破したクロアチアだ。前回大会準優勝の強豪国である。システムは4-3-3。モドリッチ、コバチッチ、ブロゾビッチによる中盤のクオリティは抜群に高い。だが、ドイツ、スペインよりも総合力は劣る。これまでのように、前半は守備一辺倒とはならないだろう。ポゼッション的にもほぼ対等な形で試合が進められそうだ。

両者の過去の対戦成績は1分け1敗。日本代表は、スコアできずに涙を飲んでいる。堅守が特徴だ。そんな難敵を相手にどう戦うべきか。答えは極めてシンプル。一次リーグのスタイルを踏襲すれば良い。最強のカード、三笘薫を活かすための作戦だ。

前半から三笘を出場させるプランもあるのだろうが、ジョーカーのポテンシャルを最大限に発揮させるためにも、前半は温存したい。相手ベンチに三笘対策を練らせないためにも、後半スタートからの出場がベストだ。じっさいに、ドイツも、スペインも混乱したまま状況を改善できずに苦杯をなめている。

これまで同様に、前半をロースコアで持ちこたえて、後半勝負。ベンチメンバーも含めた全員が監督の考えを理解できている。同じ戦い方で良い。

世界基準の冨安健洋がもたらす安定感

最終ラインから見ていこう。

左から、初出場にかかわらずスペイン戦で一気に評価を高めた谷口彰悟吉田麻也、右に冨安健洋が並ぶ。一次リーグを通して若干不安定だった守備に目処が立った。これは大きい。

注目したいのは、怪我の不安が解消された冨安である。ドイツ戦、スペイン戦のいずれも、冨安が出場してからの守備の安定感は目を見張るものがあった。組織はもちろん、景色までが安定するから不思議だ。

スペイン戦の直後には、
「プレミアでやってるんで、日常が出せたかなって思います」
と淡々と語っていたが、イングランド・プレミアリーグの名門「アーセナル」のレギュラークラスとは、なんと頼もしい存在だろうか。

さらにスペイン戦の翌日、練習後の会見では、
「スペイン戦をやって、いい感じにコンディション調整できたので、次の試合はもっといい状態で臨めるかなと思います」
と、集まった記者たちに復活を宣言した。なんと、あのスペインが調整相手、である。世界基準を体現する24歳の帰還こそが、クロアチア戦に向けての最大のストロングポイントと考えたい。

少し軽率なプレイが気にならなくはないが、ボランチは守田英正遠藤航で異論はないだろう。

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三苫、伊東、堂安、そして南野!

次に攻撃陣だ。話は攻撃モードのスイッチが入る後半以降に絞りたい。

3列目は左の三笘、右の伊東純也という両翼が、相手の守備陣を切り裂く。2人は守備の貢献度も高い。

シャドーは2枚。堂安律、あるいは鎌田大地の隣には南野拓実が欲しい。

2020年1月にリヴァプールFCへ移籍、名将ユルゲン・クロップ監督のもと、世界最高峰の舞台で、世界最先端の戦術を学び、スペシャルな経験を積んだ。モナコ移籍後は苦難の連続だったが、南野の実力はまだまだこんなものではない。

堂安の同点ゴールは南野の突破が起点となった。スペースさえあれば、プレミアリーグで揉まれた南野は生きる。

日本代表にデビューしたのは20歳。2018年から始動した森保ジャパンにおけるキャップは40を数え、大迫勇也と並ぶ17ゴールをマークしてきた。攻撃の中核を担ってきた10番の輝きをもう一度見てみたい。森保監督もきっと思いは同じはずだ。

じっさいに、ドイツ戦の後半、三苫、伊東、堂安、そして南野が屈強の守備陣に襲いかかるシーンには感動さえ覚えたものだ。日本が、強国・ドイツを翻弄しているではないか。そして勝ち切った。監督のハンジ・フリックの狼狽えた顔を見たときには、日本代表の新時代、まさに“新しい景色”を確信したものだ。

がっぷり四つで組み合って、勝ち切る準備は整った。そう言い切ってしまいたい。

ブレない指揮官の強い信念

最後に森保一監督である。

最悪のスタートを切ってしまったアジア最終予選では、「ビジョンがない」「具体的な指示がない」「カリスマ性がない」などと厳しい声に晒されつづけ、ツイッターでは「#森保辞めろ」とバッシングを浴びた指揮官だったが、この本大会一次リーグを通して1つハッキリとしたことは、監督が強い信念の持ち主であることだ。

大胆なシステム変更、迷いなき選手交代は、信頼するコーチ陣の進言を受けてのものであり、大会前のインタビューでは、「マネジメントに徹して、それ以外はできる人にやってもらう、託す、任せている」と語っている。2つの逆転勝利は断じてラッキーだけではない。「詳しくは言えませんが」と前置きしながらも、選手交代の重要性、戦術の一部を記者に語ってくれた。マジックでもなんでもない。しっかりと準備された戦略だったわけである。

とにかく結果を出した。監督が動くと風が吹く。

選手がそれを信じて団結する。そう思える組織は強い。試合後の円陣での様子を見れば一目瞭然。選手たちは監督を信頼している。

初のベスト8進出をかけた日本代表の世紀の一戦は、難敵・クロアチアが待ち構えている。キックオフは日本時間12月6日午前0時だ!


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