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日銀会合注目点:先行きの金融政策運営が焦点に浮上-正常化観測で

  • 金融政策は現状維持へ、物価の見通しとリスク評価の変更議論
  • 市場に利上げへの思惑浮上、黒田総裁会見で政策姿勢を再確認
People walk outside the Bank of Japan (BOJ) headquarters in Tokyo, Japan, on Sept. 27, 2021. 

People walk outside the Bank of Japan (BOJ) headquarters in Tokyo, Japan, on Sept. 27, 2021. 

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

日本銀行が17、18日に開く金融政策決定会合では、新たに示される経済・物価見通しと先行きの金融政策運営に関する情報発信に注目が集まる。物価上昇圧力が日本でも強まりつつあり、市場で金融政策の正常化観測も浮上していることが背景にある。

  ブルームバーグがエコノミスト48人を対象に5-12日に実施した調査では、47人が今回の会合で金融政策の現状維持が決まると予想した。会合終了後には、金融政策運営の方針とともに新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)が公表され、黒田東彦総裁が午後3時半に記者会見する予定。

日本企業はコスト高に直面
 
 

  ドイツ証券の小山賢太郎チーフ・エコノミストは、「注目はインフレ見通しで、明確に上方修正されれば、金融市場における日銀の政策正常化期待が高まる可能性がある」とみている。

  消費者物価(除く生鮮食品)は上昇傾向が続いており、前年比上昇率の見通しは2022年度を中心に上方修正も視野に入る。複数の関係者によると、会合では「下振れリスクの方が大きい」としてきたリスク評価の変更も議論する。2%の物価安定目標の実現は遠く、変更されても金融緩和の継続方針に変化を迫るものではないという。

日銀が物価見通しのリスク評価変更を議論へ、従来「下振れ」-関係者

10月展望リポートの成長率・物価見通し

 実質GDPコアCPI
2021年度 3.4% 0.0%
2022年度 2.9% 0.9%
2023年度 1.3% 1.0%

(注)政策委員見通しの中央値、対前年度比。

  黒田総裁は昨年12月の会見で、高水準のインフレが続く米欧の中央銀行がインフレ抑制にかじを切っても、日銀が「欧米のように金融政策の正常化に向けて動き出すということにはならない」との考えを示した。

  エコノミスト調査でも8割は日銀による年内の政策対応を見込んでいないが、足元で市場は日銀の利上げ観測などで振れる展開になっている。総裁会見を含めた日銀からの情報発信で、政策スタンスを再確認することになりそうだ。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは利上げ報道を踏まえて、「日銀内では、現状維持か利下げの二択になっているフォワードガイダンスの修正時期を探っているのかもしれない」と指摘。会合ではフォワードガイダンスや物価動向と予想インフレ率に関する分析内容が重要になるとみる。  

ブルームバーグ・エコノミクスの増島雄樹シニアエコノミスト
「日銀の物価・経済成長率の見通しと、日銀が輸入物価の上昇や新型コロナウイルス感染の新たな波を踏まえてリスクバランスをどのように評価するかが焦点となる」
全文(英文)をご覧になるにはこちらをクリック

他のポイント

  • 経済成長率の見通しは、供給制約が想定より長引いていることを背景に21年度は下方修正となる可能性が大きい。一方、22年度は政府の大型経済対策を織り込み、上方修正が検討される見通し
  • オミクロン株の経済への影響については、急速な感染拡大を受けた個人消費の下振れが懸念されており、黒田総裁がどのような見解を示すかが注目
  • 物価見通しのリスクバランス評価は14年10月以降、下振れリスクが大きいとされてきた。その前の同年4月(当時は年2回公表)は「リスクは上下におおむねバランスしている」と表記していた
  • 米国では連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ対応で年内に4回利上げを行うとの観測が高まる。日本の長期金利にも上昇圧力がかかる中、日銀の許容上限の0.25%程度を目指す展開になるかが焦点となっている
  • 日銀は14日、上場投資信託(ETF)の買い入れを3カ月半ぶりに実施。ETFや国債の買い入れの縮小はステルステーパリングとの指摘もある。コロナ対応オペ縮小で4月以降のマネタリーベースは減少する見込み

現在の政策運営方針

  • 日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用
  • 長期金利がゼロ%程度で推移するよう上限を設けず必要な額の長期国債を買い入れ。許容変動幅は上下0.25%程度
  • ETFとJ-REITはそれぞれ年間約12兆円、約1800億円に相当する残高増加ペースを上限に必要に応じ買い入れ
  • CPや社債などは22年3月末までの間、合計約20兆円の残高を上限に買い入れ
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