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国内の社債発行迅速化、ボラティリティー上昇で要望論強まる

  • JICAや日本電産、起債のスピードアップに賛同
  • 投資家からは意思決定後の価格変動リスク負っているとの声

日本の社債市場では、ボラティリティー(変動性)の上昇を背景に新発債の発行迅速化が進むかもしれない。

  国内では通常、ブックビルディング(需要積み上げ)に 5 日程度かかっている中、国際協力機構(JICA)や日本電産といった起債頻度が高い発行体から、普通社債のマーケティング期間短縮に前向きな意見が出ている。起債プロセスが2、3日程度に短縮されれば、24時間以内で起債に至るケースもある米国や欧州市場の発行環境に近づくことも期待できる。

  国内外で定期的に社債を発行しているJICA財務部の高橋順子課長は、金利が数時間単位で変動する状況下では起債時の迅速なプライシングが重要だと指摘。 投資家が受け入れるなら、円債の発行プロセスも「外債のスタンダードに合わせたい」と話す。  

  日本電産も、市場のボラティリティーが高い環境下では発行プロセスの迅速化は歓迎できるとしている。

Issuance Hurt

Yen corporate bond sales drop to four-year low amid volatility

Source: Bloomberg

Note: Data as of Aug. 9 each year

  ブルームバーグのデータによると、国内の社債スプレッド(上乗せ金利)は、日本銀行の政策修正観測を背景に足元で53ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)まで拡大。年初からの拡大幅は16bpと、2011年以来で最大となっている。

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  かんぽ生命保険アセットマネジメントOneニッセイアセットマネジメントといった投資家はブルームバーグとのインタビューで、発行体が社債のブックビルディング期間を短縮することは難しくないとの考えを示した。

  かんぽ生命クレジット投資部の小松昌英企画役は、社債の発行案内から実際の価格決定まで営業日で1週間程度になるため、「意思決定をしてから価格変動リスクを負ってしまっている」と説明。金利実勢に応じてより柔軟に注文の変更ができる環境が望ましいという。 

小口投資家

  一方、JICAや日本電産は、社債を専門とする人材が十分ではなく、注文決定に数日かかることもある地方銀行など小口の投資家への配慮も重要だとし、バランスの良い落としどころを見つける必要があるとしている。

  日本企業は融資での資金調達に依存する傾向があるが、起債の慣行が変われば、米国に比べて規模が小さい社債市場の成長が促進される公算がある。

  野村証券の五十嵐晃洋マネージングディレクターは、マーケティング期間の短縮化について「金利など市場変動リスクの軽減や、機動的な資金調達、起債ウインドーの選択肢の拡大、起債タイミングの分散や起債実務の簡素化に寄与する可能性がある」と指摘した。

  ただ、劣後債の大型案件などは時間をかける必要があるとの意見もある。ニッセイアセットマネジメントの藤田珠実リード・クレジット・アナリストは、発行プロセス短縮が「一律に適用されてしまうとややバランスが崩れる面もある」と話す。

原題:

Pressure Builds to Speed Up Corporate Bond Deals in Japan (1)(抜粋)

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