【米国市況】S&P500続落、国債利回りが景気後退懸念の強まり示唆
Rita Nazareth-
米国債は上昇、2年債と10年債の逆イールドは約40年ぶりの幅
-
ドル下落、136円台半ば-加ドルは利上げで上昇も上げ消す
7日の米株式市場ではS&P500種株価指数が5営業日続落。積極的な米金融引き締めを背景に、国債市場では景気下降への懸念が強まった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 3933.92 | -7.34 | -0.2% |
ダウ工業株30種平均 | 33597.92 | 1.58 | 0.0% |
ナスダック総合指数 | 10958.55 | -56.34 | -0.5% |
S&P500種はこれで100日移動平均線に近づいた。日中は上下に振れる方向感の乏しい展開だった。
アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッド氏は米連邦公開市場委員会(FOMC)が金融政策で「深刻な過ち」を犯していると述べ、債券市場にそれが顕在化していると指摘。ツイッターへの連投で、デフレのリスクはインフレのリスクをはるかに上回ると述べた。
バンク・オブ・アメリカ(BofA )のサビタ・スブラマニアン氏は、S&P500種が来年前半に新たな安値に沈むとの見方が強まりつつあるが、株式への投資を続けるべきだと指摘。「株式へのエクスポージャーを持たずに、すべての資金を債券と現金に投じ続けるのは現時点で誤りだ」とし、「株式相場はこの先も下落するが、その後は上昇する。この見方がコンセンサスになりつつあるというのが問題だ。来年前半にかけては、株式に実際に投資していないことのリスクの方が大きい」と話した。
米国債
米国債は上昇。米国債市場ではリセッション(景気後退)懸念が明白で、2年債と10年債と2年債の逆イールド幅は約40年ぶりの大きさに達した。30年債利回りは9月以来の低水準となった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 3.43% | -11.04 | -3.1% |
米10年債利回り | 3.42% | -11.45 | -3.2% |
米2年債利回り | 4.26% | -11.03 | -2.5% |
米東部時間 | 17時00分 |
データトレック・リサーチのニコラス・コラス氏は、米10年債と2年債の逆イールドは極度な幅に広がっており、それが株式トレーダーらを「動揺させているのは間違いない」と指摘。それは米金融政策が「極めて景気抑制的」だと市場が考えている兆候だと述べた。
その上で、「前回こうした水準となったのは『ボルカー・リセッション』が始まった時で、ボルカー氏の元で当時の米金融当局は既に金利を引き下げていた」と説明。「今の米金融当局はまだ金利を『より高く、より長期に』維持する議論の段階だ。要するに市場が言おうとしているのは、また人為的な景気後退が近くに迫っているということだ。つまり『パウエル・リセッション』だ」と付け加えた。
10年債利回りはロシアのプーチン大統領の発言を受けて一時13ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下げた。
ロシアのプーチン大統領、世界で「核戦争」のリスク高まっている (2)
外為
外国為替市場ではドルが下落。対円では136円台前半まで下げた。東京時間からニューヨーク時間早朝にかけて137円台後半で推移した後、ドル買いの勢いが失速した。
ユーロは上げを縮小。ロシアのプーチン大統領が同国の核兵器は紛争における「抑止要素」だと主張しながらも、核の先制使用はしないと約束するには至らなかったことが背景。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1265.91 | -4.22 | -0.3% |
ドル/円 | ¥136.63 | ¥0.01 | 0.0% |
ユーロ/ドル | $1.0507 | $0.01 | 0.0% |
米東部時間 | 17時00分 |
一方、カナダ・ドルは上げを消した。カナダ銀行(中央銀行)は政策金利の0.5ポイント引き上げを決めたものの、現行の利上げサイクルをいったん停止する可能性を示唆した。
カナダ中銀、0.5ポイント利上げ-引き上げ休止の可能性示唆 (1)
スコシアバンクのショーン・オズボーン氏は「この日の決定自体にかかわらず、カナダ中銀の引き締めサイクルは米金融当局よりも早期に、かつ低い水準でピークに達するという可能性が依然極めて高い」と述べた。
ミーラ・チャンダン氏らJPモルガンのアナリストは、成長見通しが引き上げられる国が増える中、そうした見通しの改善は一段のドル下落を示唆しているとリポートで指摘。ショートの通貨バスケットには先週時点で円が含まれているとし、弱い成長モメンタムなどを理由に挙げた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は4営業日続落。流動性が低下し、市場の活気が失われている。朝方は上昇する場面もあったが、米国の燃料供給における制約が和らぎつつある兆しを背景に、再び下げに転じた。リスク回避のセンチメントが強まったことも重しになった。
CIBCプライベート・ウェルス・マネジメントのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「今の原油市場には押し目で買おうという意欲は文字通り一切見られない」と指摘。「これが雪だるま式に大きな動きにつながっている」と述べた。
米エネルギー情報局(EIA)のリポートによると、留出油の在庫は600万バレル余り増加。ガソリン在庫は530万バレル増え、需要鈍化を示唆した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は、前日比2.24ドル(3%)安の1バレル=72.01ドルで終了。一時は71.75ドルまで下げた。ロンドンICEの北海ブレント2月限は2.18ドル下げて77.17ドル。WTIとブレントはいずれも2022年の上昇分をすべて消した。
金
ニューヨーク金相場は続伸。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は15.60ドル(0.9%)高の1オンス=1798ドルちょうどで引けた。金スポット価格はニューヨーク時間午後2時35分時点で、1%上昇の1787.90ドル。
原題:Stock Traders Skittish With Treasury Curve Signals: Markets Wrap(抜粋)
Loonie Rises; Euro Pares Gain on Putin Comments: Inside G-10(抜粋)
JPMorgan Says Growth Models Suggest Dollar to Weaken Further(抜粋)
Oil Tumbles to Erase 2022 Gains on Easing Demand for Fuels(抜粋)