日野自、三菱ふそうと経営統合へ-トヨタなど含めた4社基本合意
稲島剛史-
国内市場で商用車メーカーの単独対応困難、水素やCASEで協力も
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日野自はエンジン不正で巨額損失、三菱ふそうとの統合は驚きと識者
日野自動車は30日、三菱ふそうトラック・バスと経営統合する方針を決めた、と発表した。統合後、日野自はトヨタの子会社ではなくなる見込みだ。
発表資料によると、日野自と三菱ふそうそれぞれの親会社であるトヨタ自動車と独ダイムラー・トラックを含めた4社で基本合意書を締結。2024年3月に法的拘束力のある最終契約、同年12月末までの統合実現を目指して協議、検討を進めていくという。
統合比率は現時点で確定しておらず4社間の協議で合意を目指す。トヨタとダイムラートラックの持分比率は同割合とする予定で、経営統合後はトヨタは日野自の親会社でなくなる見込み。統合会社の株式は東京証券取引所プライム市場と名古屋証券取引所プレミア市場での上場を想定しているという。
日野自は昨年に発覚したエンジン性能試験の不正の影響で、国土交通省は問題のエンジンを搭載した一部対象車両の装置型式指定や燃費評価を取り消す行政処分を出した。これらを受け、日野自は2022年3月期に847億円、前期(23年3月期)は1177億円の純損失を計上するなど業績が悪化していた。
日野自は統合の背景について、商用車は乗用車に比べて台数も少なく、「日本市場で商用車メーカー各社が単独で対応するのは大変難しい状況」とした上で、産業や雇用を守るには 、両社が統合することで開発・生産など事業効率を上げ、競争力を上げる必要があるなどとした。
東海東京調査センターの杉浦誠司アナリストは、エンジン不正で先行きが懸念されていたことから日野自はどこかと統合せざるを得ないとみていたが、トヨタが出資する「いすゞではなく三菱ふそうが相手だったことはサプライズ」と述べた。
三菱ふそうのウェブサイトによると、同社の株式89.29%をダイムラートラックが保有。残りの10.71%を三菱グループが保有している。
「スケールこそが鍵」
4社はまた、自動車業界で普及が見込まれる水素やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)技術の開発において世界規模で協業することも発表、統合会社の競争力強化を支援する。
昨年の売上高が約509億ユーロ(約7兆6400億円)と世界最大級の商用車メーカーであるダイムラー・トラックのマーティン・ダウム最高経営責任者(CEO)は都内で開いた会見で、脱炭素化に向けて「バッテリー、燃料電池、水素エンジンなどの開発を全て同時に行うのはこの業界におけるトップ企業にとっても非常に大変だ」と指摘。
その上で、「この同時並行の技術開発を経済的に成り立たせるのは1つしかない。規模の経済、スケールこそが鍵だ」と経営統合によるメリットを訴えた。
トヨタの佐藤恒治社長は会見で、「中でも水素領域の取り組みは豊かなモビリティ社会を実現するために4社で力を入れて協力していく大きなテーマ」と述べた。トヨタとダイムラー・トラックは早期から燃料電池や水素エンジンの技術開発などを進めてきたとし、今後は「4社で水素モビリティの普及を商用車から加速させていきたい」と続けた。
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