エキゾチック・セダン──新型アルファロメオ・ジュリア試乗記

一部改良を受けたアルファロメオの「ジュリア」は、ドイツブランドとは異なる魅力があった! “イタ車”ならではのスポーティな走りを小川フミオがレポートする。
エキゾチック・セダン──新型アルファロメオ・ジュリア試乗記

好きにならずにいられない

アルファロメオという響きはいつの時代も耳に心地よく感じる。なぜそんなに高いブランド・イメージを維持しているのか……知りたい人は、アルファロメオ・ジュリア2.0ターボ・ベローチェをぜひ体感すると良い。

すばらしく楽しいセダンだ。「活き活きとしている」という言葉がぴったり! よくまわるエンジン、ダイレクト感の強いステアリング、きびきびと動く運動性……。

【主要諸元(ベローチェ)】全長×全幅×全高:4655×1865×1435mm、ホイールベース2820mm、車両重量1630kg、乗車定員5名、エンジン1995cc直列4気筒DOHCガソリンターボ(280ps/5250rpm、400Nm/2250rpm)、トランスミッション8AT、駆動方式RWD、タイヤサイズ(フロント)225/40R19(リヤ)255/35R19、価格646万円。

2022年のマイナーチェンジで、LSD(リミテッドスリップディファンレンシャル)を搭載。高速のコーナリングでも車輪の空転が抑制され、スポーティさが一段上がったといえる。

くわえて、フロントグリルとエクステリアミラーのハウジングがブラックになり、テールカッターもダークな色調に変更された。19インチ径のアルミホイールも新デザインのものになっている。

19インチ 5ホールデザイン アルミホイールを履く。ブレーキキャリパーはレッド仕上げ。

試乗車はブラックの車体色だったので、かなり精悍なイメージ。インテリアでは、サイドサポートが大きく張り出しているスポーツシートは真っ赤! ブラックとレッドの劇的なコンビネーションだ。

知り合いのジャーナリストで「かつてBMWは、アルファロメオのようなクルマづくりを目指していたけれど、いまは丸くなってしまった」と、言った人がいる。まさに言い得て妙。

ジュリアは、クルマ好きなら、好きにならずにいられないはず。それほど、スポーティによく仕上がっているのだ。

Connect システム(8.8インチタッチディスプレイ)およびナビゲーションシステム、地上デジタルTVチューナーは標準。

スポーツレザーシートを採用。6ウェイパワーシート(前席、運転席メモリー付き)、パワーランバーサポート&パワーサイドサポート(前席)は標準。

思いどおりにクルマを操舵できる

全長4655mmの4ドアボディに、1995cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジン搭載。206kWの最高出力と400Nmの最大トルクで、後輪を駆動する。

発進時は、軽くアクセルペダルを踏み込んだだけで、間髪を入れずというかんじでクルマは加速する。足まわりの設定も、フロントが浮き上がることもなく、獲物にとびかかるように前に飛び出す。

足まわりでは専用スポーツバンパーを搭載。

とくに印象に残るのは、しゃきっとした足まわりと組み合わされたステアリングだ。ドライバーの腕と直結したようなクイックさで、思いどおりにクルマを操舵できる。

「これこれ、これですよ!」と、ちょっと走り出しただけで、私は嬉しくなってしまった。

直列4気筒 マルチエア 16バルブ インタークーラー付きツインスクロールターボを搭載。

電子制御式8速オートマチックを採用。

インフォテインメントのモニタースクリーンは小さいし、装備は、ドイツの競合と比較すると、シンプルかもしれない。

でも乗れば、多色のアンビエントライトとか、ジェスチャーコントロールとか、最新の快適装備がない点なんて、なにも気にならなくなるはずだ。

ALFA DNA ドライブモードシステムを搭載。

スポーツレザーステアリングはオーディオコントローラー付き。

ドライバーの気分をたまらなく昂揚させてくれる性能ぶりにかけては、競合の追随をなかなか許さない。ものすごく大事にしたいクルマに思えてくる。

かつてのスポーツモデル「4C」ほどのむきだしのダイレクト感はなく、そこはセダン的な快適性もある程度確保されている。

“素”のダイレクト感が最高の持ち味

もうひとつ、ジュリアがいいのは、N1耐久レースや、むかしのツーリングカーレースを連想させる点だ。

量産車の(ほぼ)まんまで出走して、それでいいとこを狙いたいひと向けに作られたんじゃないか? というぐらい、ジュリアは楽しい。

WLTCモード燃費は12.1km/L。

ジュリアにはちょっと前まで「Ti」と名付けられたモデルも設定されていた。1950年代にイタリアで始まった国際ツーリングカーレース「Turismo Internazionale」からとった名称という。

アルファロメオはかつて、「1900」、「ジュリエッタ」などをこのレースで走らせ。高性能モデルに、TIとつけていた。ひとつの黄金時代のなつかしい名前なのだ。

スポーツタイプメーターパネル(ホワイトイルミネーション)。7インチフルカラーTFTマルチファンクションディスプレイも付く。

harman/kardonプレミアムオーディオシステム(14スピーカー/900Wアンプ)を搭載。

ただ、今回のジュリアのターボ・ベローチェは、ジュリア2.0ターボTi(バランスのとれたいいクルマだった)が148kWと330Nmであったのに対して、性能数値ではだいぶ上まわっている。

日本でも、4輪駆動モデルやV6モデルやディーゼルモデルが導入されたこともあるけれど、いまは今回の後輪駆動の2.0ターボ・ベローチェに一本化されている。

リヤシートはセンターアームレスト付き。

トランクスルー機能付き。

ラゲッジルーム容量は480リッター。

“素”のダイレクト感が最高の持ち味で、こんな楽しいセダンをずっと作ってきたアルファロメオの総決算みたいなモデルだ、と、私は思った。

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文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)