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GPIFの外債投資余地が株高でさらに拡大、7兆円規模との試算も

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が外国債券に投資する余地が2020年度に入って一段と広がっているもようだ。運用資産全体に占める外債の構成比が、世界的な株高に伴う保有内外株の評価額の膨らみで、目標値より一段と下がったとみられるためだ。

  GPIFの公表資料に基づくブルームバーグの試算によれば、為替ヘッジをしない外債の構成比は3月末に年金積立金全体の22.2%で、目標値の25%まで引き上げるには約4.3兆円の積み増しが必要だった。その後円相場と米欧金利がほぼ横ばい圏にとどまる中、6月末の国内株や外国株の運用評価に利用している指標はそれぞれ11%、19%程度上昇した。

  モルガン・スタンレーMUFG証券の株式統括本部でエグゼクティブ・ディレクターを務める岩尾洋平氏の推計によると、為替ヘッジなし外債の構成比は6月末に20.9%に低下し、目標値を満たす保有額との差は7兆円弱に開いたもようだ。

GPIFの資産構成比

国内債国内株外債ヘッジ外債外株短期資産
目標値25%25%25%国内債に算入25%国内債に算入
3月末23.87%22.87%22.22%1.20%23.90%5.95%
6月末22.1%23.7%20.9%1.1%26.7%5.5%

*6月末の数字はモルガン・スタンレーMUFG証券の推計値

  GPIFは内外債券・株式などが年金積立金全体に占める構成比の目標値や乖離(かいり)許容幅を定めた基本ポートフォリオを約5年半ぶりに見直し、超低金利が続く国内債の目標値を10ポイント下げ、外債をその分引き上げた。3月末に全体の1.2%を占めていた為替ヘッジ付き外債はルール変更で、4月から国内債の枠に算入している。

  GPIFは市場への影響を避ける観点から具体的な投資行動は明らかにしないが、ポートフォリオ改定の前後に外債を買い増していた可能性がある。財務省の統計によれば、国内年金勢の投資動向を映す銀行の信託勘定は海外中長期債の買い越し額が1月、2月にそれぞれ2兆円超と過去最大を記録し、6月は1兆円近く買い越した。

国内銀信託勘定の海外中長期債売買動向

  GPIFの宮園雅敬理事長は3日の記者会見で、外債の構成比は為替ヘッジ付きを4月から国内債に算入することも踏まえると「かなりアンダーウエートだ」と指摘。目標値の上下6ポイントずつという乖離許容幅の範囲内には収まっており、「すぐに買いに走ることにはならないが、外債運用の多様化は今後の課題だ」と述べた。

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