デニムパンツが作業着からファッションアイテムへと進化を遂げたように、ダウンジャケットもまた、かつては登山や寒冷地用に開発された〝機能性衣料〟だった。その流れを大胆に変えたのが、モンクレールだ。1952年に創業した同社も当初は、寝袋やテントなどの登山グッズのメーカーだった。最初のダウンジャケットを作ったのは1954年。世界2位の高さを誇るカラコルム山脈の最高峰に挑むイタリア登頂隊のために、寝袋を改良して製作。このダウンジャケットが評判を呼び、その後、世界中の登山隊、探検隊が愛用することになる。
そんな〝プロユース〟のブランドが大きな変貌を遂げたのが、1980年だった。デザイナー、シャンタル・トーマスとのコラボレーションを発表。すっきりとしたシルエットに、上品でカラフルなファブリック、ボタンフロントやリバーシブル仕様など、これまでのダウンジャケットのイメージを大胆に変革した。
2000年代以降の躍進は、説明するまでもないだろう。2003年に現在のCEOであるレモ・ルッフィーニが経営権を獲得すると、モンクレールはファッションブランドからモードブランドへとさらなる進化を遂げた。エミリオ・プッチ、フェンディ、バレンシアガなどとのコラボを発表したかと思えば、2006年には最上級ブランドとして「GAMME ROUGE」を立ち上げ、アレッサンドラ・ファッキネッティやジャンバティスタ・ヴァリらをクリエイティブ・ディレクターに登用。さらに2009年にはトム・ブラウンの手によるメンズの「GAMME BLEU」もスタート。その後も世界中のトップクリエイターを招いたコレクションを次々と発表。いまやファッションの大きな潮流を作り出すトップブランドにまで成長した。
そんなブランドの歴史を追っていると、創業70周年を記念した「モンクレール マヤ 70 ジャケット」には、そのすべてが詰め込まれているように思える。機能を突き詰め、やがて美に行き着く。あるべき〝ものづくり〟の姿がこのブランドには息づいている。『GQ JAPAN』にとってモンクレールは、ものづくりの姿勢に共鳴するブランドであり、刺激を受けて互いを高めあう希有な存在である。
創業70周年をセレブレート
リミテッドエディションの「モンクレール マヤ 70 ジャケット」が登場。メタリックシルバーやアースカラーなど、11色の豊富なカラーパレットをラインナップ。
各¥254,100、シルバーのみ ¥322,300 by MONCLER(モンクレールジャパン)
PICK UP
Look Back 70 Years of Moncler
1950s
1954
世界第二の高峰であるカラコルムの登頂に初めて成功したイタリアの探検家たちに装備を提供しました。その後70年の時を経ても、ダウンジャケットのパイオニアとしてのDNAがすべてのモンクレールのウェアの中に生き続けています。
1960s
1968
冬季オリンピックグルノーブル大会で新記録を打ち出したチャンピオンのフランス男子アルペンスキーチームに衣装を提供しました。
1970s
1970
モンクレールはアルペンスキーの講師陣にユニフォームを提供し、その伝統は今も受け継がれています。
1980s
1980年から1989年まで続いたデザイナー、シャンタル・トーマスとのコラボレーションはファッションブランドとしてのモンクレールのイメージを急速に浸透させました。フロントのジップをボタンに変えたり、トリムファーをあしらったり、サテン素材やリバーシブル素材を取り入れることによりクラシックなダウンジャケットにハイファッションの要素を投入しました。
1986
モンクレールのダウンジャケットがミラノの若きパニナリ(註)たちの間で、ポップカルチャーのスタイルの象徴となりました。
(註)パニナリ:イタリアのミラノにおけるブランド志向の強い、おしゃれな若者たち。プレッピー・ルック風スタイルを好むことで知られる。
2000s
2010s
2013
ニューヨークファッションウィーク中、ゴッサムホールに山が現れ、370人のモデルによるモンクレールグルノーブルの壮大なショーを開催。2010年から2017年にかけてビッグアップルで開催されたイベントでは、ブランドのレガシーを称えつつ、デザインの進化を披露しました。アート、パフォーマンス、ダンス、スポーツが各イベントの中心で有り続けました。
2019
ヴァレンティノのピエールパオロ・ピッチョーリによる、1 MONCLER PIERPAOLO PICCIOLIはブランドの理念であるクリエイティブ、イマジネーション、コラボレーションを称えた豪華なコレクションを発表しました。
2020s
2020
モンクレールのダウンジャケットは、リチャード・クインによる先見性のあるモンクレールジーニアスでのコレクションでクチュール化されました。
2022
未来に向けて地球を保護し、環境負荷を低減し、循環型経済へ移行することを約束するBORN TO PROTECTキャンペーンを発表。
WORDS BY KOSUKE KAWAKAMI