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雨宮氏でも政策変更あると海外勢、次期副総裁にも関心-市場の声

更新日時

日本銀行の黒田東彦総裁の後任人事を巡り、政府が雨宮正佳副総裁に就任を打診したとの報道を受け、海外のストラテジストらからは、雨宮氏の下でも政策変更は行われる可能性が高いと見方が出ているほか、ドル・円相場にはプラスで、基本的には日本国債にとっても好材料となる公算が大きいなどとみられている。一方、国内の市場関係者からは今後の関心事は次期副総裁の人選だとの声も聞かれた。

海外の専門家の見方

シティグループのストラテジスト、エブラヒム・ラーバリ氏

  • 雨宮氏の下でも政策変更は行われる可能性が高く、同氏が選ばれれば3月の日銀会合に向け、政策変更で調整の余地がさらにあるかについて市場で実際に議論される可能性があると考えられる

ノムラ・オーストラリアの金利ストラテジスト、アンドルー・タイスハースト氏(シドニー在勤)

  • 投資家のドルショート・円ロングのポジションが持ち高データで示唆されていたことなどから、日経の報道はドル・円にはプラスだ。日本国債にとっても好材料となる公算が大きい(そうでない場合より利回りは低くなる)。ただ債券市場にとっては、3日夜の予想以上に力強い米統計および米金融当局を巡る(タカ派的な)意味合いの方がより大きな材料になる可能性が高い

ノルデア銀行のシニアストラテジスト、デーン・セコブ氏(オスロ在勤)

  • 報道が正しく雨宮氏が総裁職を引き受ければ、外国人投資家は日銀の異次元緩和政策の撤廃予想を見直す必要が出てくる
  • 政府が例えば前副総裁の中曽宏氏らよりタカ派から人選するとの見方も一部にあった。このため欧米市場が開く際に、ドルは対円で引き続き上昇する可能性がある

ING銀行のシニア金利ストラテジスト、アントワーヌ・ブーベ氏(ロンドン在勤)

  • 債券には厳しい1週間が続いた後、今回の報道は若干の強気材料になるはずだ
  • 留意点としては、昨年12月の熱狂を経てコンセンサスはかなり段階的な正常化プロセスに既に向かっていると感じている。もう一つには、日本の投資家はこれまでの1年間の大半の時期に外債を売り越したことから、日銀の政策正常化を背景にした売りの波を予想するのは正しくなかったと思う

 

為替

りそなホールディングス市場企画部の梶田伸介チーフストラテジスト

  • 総裁候補の中では一番ハト派で、金融政策が急に転換することはないとの安心感からドル・円は買い戻しが入った
  • 先週末発表の米雇用統計や米ISM非製造業指数が米経済の先行きに対する過度な悲観を払しょくする内容で米金利が上昇。もっとも重要なテーマの日米金融政策で2つの上昇材料が出てきたことで、ドル・円は反転したというのが先週末からの流れ
  • 雨宮氏でも先々の政策変更の思惑は切れないだろうが、目先は金融政策の急激な転換はなさそうということでドル・円の買い戻しが続く可能性が高い。年初来高値134円77銭が一つ戻りのターゲットになる

BofA証券の山田修輔主席FX・金利ストラテジスト

  • 雨宮氏への打診自体は大きなサプライズではない。もう少し黒田総裁からかい離した人選も考えられていたため、4月会合など早期の政策変更リスクは軽減された
  • 雨宮氏が総裁になったとしても、出口戦略への方向性は変わらない。正常化の方向性は意識され続けるとみられ、新たに円安トレンドに変わるわけではないと思う

債券

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介債券ストラテジスト

  • これまで新総裁候補を市場参加者に問う各種サーベイでは雨宮氏が最も得票数が多く本命視されていたが、市場はタカ派的なサプライズ人事にも身構えていたとみられる
  • 金融緩和の急激な出口政策が回避されるとの安心感から、いったんは買い材料視されるだろう
  • 債券相場は先週末の夜間取引で先物が下落した分を、日銀総裁人事報道を受けて買い戻す展開

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト

  • 金融政策の継続性を重視か、それとも改革色を前面に出すかという視点からは、最も継続性をアピールできるのが雨宮氏
  • 内閣支持率が低いままの岸田首相は、党内で求心力を維持するため、自民党最大派閥である安倍派への一定の気づかいが欠かせない
  • 雨宮氏の受諾を前提に、今後の関心事は次期副総裁の人選。岸田首相が独自性を発揮できるのは次期副総裁の人選

株式

東海東京調査センターの平川昇二チーフグローバルストラテジスト

  • 金融政策の不透明感が払しょくされる。黒田氏からあまり変わらないのであれば長期金利の0.5%を守るだろうし、円高も限定的となるだろう
  • 黒田氏の政策を踏襲するということだろう。市場はそれをほとんど織り込んでいたが、その通りになったというのはそれなりにプラスである

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジスト

  • 雨宮氏になると本命中の本命。黒田路線の異次元緩和を是正するにしても時間軸を延長してゆっくりとしたテンポでの脱却となる可能性が非常に高い。一番の本命に落ち着いたことはマーケットの不透明要因が消えることになる
  • 輸出株にとっても急速な円高が重しになっていた背景から、自動車などを中心に好感される
  • 極端な円高進行がないであろうというのは、企業業績面においてもプラスという解釈はできる
  • 雨宮氏でも10年間続いた超緩和をあと5年間続けることはありえず、緩慢ながらも超緩和からの脱却は徐々に進む。大きな流れで見ると金融株にネガティブな反応はない

 

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(市場関係者のコメントを追加しました)
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