ソフトバンクG、TモバイルUS株を売却へー最大2兆円強
日向貴彦-
保有株式の3分の2に当たる1億9831万株を現金化
-
新型コロナ警戒で「手元資金を厚くする必要」
ソフトバンクグループは23日、保有するTモバイルUS株の3分の2に当たる最大1億9831万株を売却すると発表した。22日のTモバイル株の終値から試算すると、売却額は211億ドル(約2兆2500億円)。
調達資金は自社株買いに加え、負債の償還などに充てる。正式な売却株数、価額は米東部時間23日に決定する。ブルームバーグのデータによると、ソフトバンクGはTモバイル株の24.65%を保有している。
今回の取引では、ソフトバンクGはドイツテレコム傘下のTモバイルに売却し、同社が米国の投資家に公募や私募で売却する。取締役会14人のうち、これまで4人を指名することができたが、今後は1人に減少するか指名権を失う可能性がある。また、残りの保有株の大半については、ドイツテレコムが購入できるオプション(行使期限2024年6月)の対象となる。
一連の取引に関連し、ソフトバンクGはTモバイルに対して3億ドルの費用などを支払う。自社株買いなどに充てるまでの間の調達資金は現預金で保有するだけでなく、流動性の高い優良有価証券などで運用することもあるという。連結業績への影響については、TモバイルUSを引き続き持分法適用関連会社とする場合と除外する場合で異なるとしている。
ソフトバンクG広報担当の湯浅謙一氏は、今後の資産売却の予定や業績への影響などについては回答を控えるとする一方、新型コロナウイルスの第2波、第3波が警戒される中、「手元資金のさらなる拡充が必要」と売却の狙いについて説明した。
Tモバイルの発表によれば、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、シティグループ、JPモルガンが公募による売却の共同主幹事を務める。
いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は、ソフトバンクGは投資会社としての姿勢を見せており、「Tモバイル株やソフトバンク株は全部売ってもいい」と述べた。25日の株主総会を控え、投資家の「安心材料になる」とも評価した。
23日の取引でソフトバンクG株は、一時前日比3%高の5679円と2月21日以来、4カ月ぶりの高値を付けた。終値は0.3%安の5497円。
20年3月期に巨額赤字を計上したソフトバンクGは、3月に自社株買いと負債削減に充てる最大4兆5000億円の資産売却計画を公表。既にアリババ・グループ・ホールディング株を使った1兆2000億円と通信子会社のソフトバンク株売却による3100億円の調達を発表済みだ。運営するビジョン・ファンドは新型コロナウイルスの影響などで損失が拡大する恐れもあり、手元資金の確保が喫緊の課題となっている。
孫正義社長は5月の決算会見で、ビジョン・ファンドの投資先のうち、15社程度が今後倒産する可能性を示唆した上で、現状は「現金を手元に持つために資産の切り売りをしている」と説明した。