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生理、100年の歴史──ナプキンの誕生から、生理のタブー感を助長した広告、タンポン税廃止の運動まで

アメリカでは昔タンポンが家庭用ミシンで作られたことや、世界初の月経カップは1937年に作られていたことなど、実は生理用品について知らないことがいっぱい! その歴史を振り返ることで、長年タブー視されてきた背景から現代に続く生理の貧困問題までを紐解く。

1910年代──初の使い捨て生理用品が誕生

1911年、一般的な鎮痛剤としてアセトアミノフェンを含有するマイドル(Midol)がアメリカで販売スタート。

1919年、当時優れた吸収力を持つ包帯によく使われていたセルコットンを用いた使い捨ての吸収性パッドが開発され、初の使い捨て生理用品が誕生した。しかしほとんどの女性は、手製の布ナプキンを使用していた。

1920年代──広告が暗示する、「生理を隠す」イメージ

1920年代には、「シアーズカタログ」がナプキンを固定するサニタリーベルトと夜用の生理用ショーツを紹介。だが、当時の広告では控えめな表現を用い、「月経は恥ずかしいもの」というイメージを植え付けた。包装も敢えて簡易的なものにしていたという。

1930年代──タンポンと同じころに月経カップも誕生していた!

1930年代まで、医師は月経を障がいとして扱い、生理期間中は体を動かさないよう指導していたという。しかしこの間違った神話を覆すべく、コーテックス社の広告ではアクティブウェアに身を包んだ女性を広告に登場させた。また、母親が娘に生理を説明するために、「Marjorie May’s 12th Birthday(原題)」という性教育教材パンフレットも作成された。

1931年、アール・ハース博士が最初のアプリケーター付きタンポンの特許を取得する。そしてガートルード・テンドリッチが3万2000ドルでその特許を買取り、生理用品メーカーのタンパックスを設立。家庭用ミシンで作られた最初のタンポンが誕生した。

1937年には、レオナ・チャーマーズが月経カップを発明。しかし戦時中の物資不足から、チャーマーズの会社は倒産してしまう。

1940年代──第二次世界大戦中は海綿や布ナプキンが主流に

戦時中、生理用品の広告は“強い女性”を印象づけるものが主流となった。また、第二次世界大戦中は多くの物資が不足し、生理時に海綿を用いたヘルススポンジや布ナプキンを使う人が多くなった。

1950年代──生理を隠すことが美徳?

フェミニニティへの回帰を表現したというモーデス社の生理用品の広告には、生理の直接的な描写はなかった。彼らのひそかなキャッチフレーズは、「Modess...…because(謙虚……なぜなら)」。また、「タンポンを財布に隠せる」ことを売りにしていた別の会社も。1950年代頃は、生理を隠すことが美徳とされていた時代だった。

1960年代──月経カップ、再び! これまでにない広告が誕生

融資を受けたレオナ・チャーマーズは、再び月経カップの会社を設立し、白いビルボードに、チューリップと月経カップ「タセット」を手にした広告でタイムズスクエアを占拠した。その広告には、「タンポンでも、ナプキンでもない。より良い選択を」と書かれた。しかし、またも生理用品の主流にはならず、起業から20年後に倒産してしまうことになる。

一方、ナプキン市場は飛躍し、コーテックス社は毎月2500万箱を売り上げた。

1970年代──初めて生理が映画で描かれるも、タブー感が顕在

ステイフリー社とコーテックス社は、現在は一般的となった粘着テープのついたナプキンを開発。それにより、下着にしっかり固定されるようになり、スポーツ時にもずれないと話題に。それまではナプキンを固定するベルトや生理用の下着が必要だったため、この開発のおかげで手間がひとつ大きく解消されることとなった。

『キャリー』(1976)で、映画として初めて女性の経血シーンが登場。当時の主人公のキャリーは学校で初潮を迎え混乱していると、クライスメイトからタンポンやナプキンを投げつけられ「今すぐ栓をしろ!」「自分の体を管理しろ!」と罵られる。当時の「生理のタブー」を物語る表現描写だ。

一方、小説界では、初潮を迎えた少女の心情を描いたジュディ・ブルーム著の『Are You There God? It's Me, Margaret(原題)』が話題となった。

1980年代──トキシックショック症候群で死者

高吸収性タンポンの発売後、トキシックショック症候群で少なくとも40人の女性が死亡し、深刻な問題となった。この頃から、吸水性を表現するために青い液体が広告に使用されるように。

また、コーネル医科大学の医師が生理痛の療法としてイブプロフェンを推奨し、これまで心因性だとばかり考えられていた説が覆された。

1990年代──生理用品に伴う安全性を高めるために動いた議員の有志

横漏れを軽減する羽つきナプキンが発売されるようになり、1985年に13億ドルだった生理用品市場が、1991年には24億ドル(約3000億円)にまで急拡大する。米民主党のキャロリン・マロニー下院議員は、トキシックショック症候群やタンポンの使用に関する研究への資金提供を増やす法案を提案。だが、彼女の動議は却下された。

1997年の調査で、18億人中4億人しか市販の生理用品にアクセスできていないことがわかった。「タンポン税」や「生理の貧困」の議論は、まだこの時点では高まっていない。

2000年代──PMSや低用量ピルに関する新たな調査結果

2004年に行われた研究で、片頭痛と生理周期が関連づけられ、女性は生理の2日前に頭痛を経験する確率が71%高いことが示された。

2006年に発表された調査では、低用量ピルを服用する女性が服用を中止すると、99%の確率で90日以内に排卵が起こると証明された。

2010年代──オールジェンダー向けの生理用ボクサーも

21世紀に入り、ついに広告に血液が初めて登場する。

また、トランスジェンダーやノンバイナリーの生理への認知度が上がり、オールジェンダー向けの生理用ボクサーが誕生。生理周期を予測する生理記録アプリが開発されると同時に、トランスジェンダーの人がホルモン補充療法による心身の影響を確認できる機能を搭載したものも登場した。

2015年のロンドンマラソンでは当時26歳のキラン・ガンディーが出血しながら完走し、生理の議論がオープンになるきっかけとなった。また、世界には生理用品を手に入れられない女性がいることを訴えた。

現在──生理用品を社会インフラに

環境配慮型の生理用品が増加。ようやく、月経カップや生理用吸水パンツなどの再利用可能な生理用品が脚光を浴びるようになり、インドの会社はバナナの繊維を用いた生分解性ナプキンを開発するなどのイノベーションが起きている。

また、タンポン税や生理用品のインフラ化など、政治的な議論も活発になってきた。私たちは生涯を通して生理用品に平均1万8000ドル以上(233万円)のお金を使う。約38年間、約456回の生理期間と仮定すると、トータルで約6年間にのぼり、1万1400個の生理用品を使うのだから。

Text: Mina Oba