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【米国市況】S&P500種は小反発、CPIや決算控え慎重-141円前半

  • 国債利回り低下、5年債利回りは過去1カ月余りで最大の下げ
  • 円は上昇、対ドル141円台前半-3週間ぶり高値

米株式相場は慎重な雰囲気で1週間をスタート。米消費者物価指数(CPI)の公表や決算シーズンの開始を待つ中、一連の米金融当局者発言を意識する展開となった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数4409.5310.580.24%
ダウ工業株30種平均33944.40209.520.62%
ナスダック総合指数13685.4824.760.18%

  S&P500種株価指数は小反発。この日はテスラが1.8%安、アマゾン・ドット・コムも「プライムデー」のイベントを前に売られるなど、巨大テクノロジー株による支えもあまり得られなかった。大手銀行で構成する指数は上げ幅を縮小。米大手銀行の資本要件引き上げ計画案に関するニュースが伝わった。

大手米銀の資本要件引き上げへ、バーFRB副議長が改革案説明 (1)

  6月米CPIの公表を12日に控え、連邦準備制度理事会(FRB)のバー副議長とサンフランシスコ連銀のデーリー総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁はこの日、インフレを2%目標に戻すには年内に追加利上げが必要になるとの考えをそろって示した。一方、アトランタ連銀のボスティック総裁は、景気減速の兆しが見える中で政策当局者は今のところ忍耐強くいられるとの見解を示した。

FOMC、インフレ目標達成には追加利上げが必要-当局者3人が指摘

アトランタ連銀総裁、FRBは忍耐強くいられる-抑制的姿勢が奏功

  株式相場は上期に力強い上昇を演じて以降、モメンタムが減速。経済のさまざまな要因が企業利益に及ぼす影響を巡り、懸念が再燃したことが背景にある。モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は、高い株価バリュエーションと金利上昇、流動性低下を踏まえ、企業の業績見通しが通常以上に重要になるだろうとの見方を示した。

米決算シーズンは株価上昇を引き起こさず-モルガンSのウィルソン氏

  プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、シーマ・シャー氏は「この先には、多くのリスクがまだ控えている」と指摘。「幅広い株式のバリュエーションが再び伸長しているなど、市場は完璧さを想定した価格になっており、期待外れの企業決算に脆弱(ぜいじゃく)な状況だ」と述べた。

  JPモルガン・チェースやシティグループ、ウェルズ・ファーゴが14日に業績を発表し、決算シーズンが本格化する。

  ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、マット・メイリー氏は決算シーズンが「想定したほど悪くない」場合でも、相場が上昇するのは難しくなると指摘。特に、相場がかなり割高になっていることを理由に挙げた。

  その上で、企業の業績ガイダンスが「まずまず」の場合に、相場が大きく売られることを意味するわけではないと付け加えた。しかし、企業の見通しが大きな失望を誘う内容になれば、「株式市場にとって深刻な向かい風となるだろう」と続けた。

米国債

  米国債市場では短期債を中心に利回りが低下。経済で見られるディスインフレの動きを踏まえれば、先週の売りは行き過ぎていたとの見方が浮上した。

  5年債利回りは13ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の4.23%と、過去1カ月余りで最大の下げとなった。先週には一時4.45%付近まで上昇していた。6月のADP統計で雇用者数が急増し、年内あと2回の追加利上げ観測が高まったことが背景にある。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.03%-1.2-0.31%
米10年債利回り3.99%-6.8-1.67%
米2年債利回り4.86%-8.8-1.79%
  米東部時間16時56分

  この日は主要な経済指標の発表がない中で、利回りは低下。ただ、米中古車価格が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まって以来最大の下げとなったこことで、相場が支えられたとの声が聞かれた。またモルガン・スタンレーは、インフレ率は「年末にかけて急速に低下する可能性が高い」との見方から、米5年債の買いを勧めた。12日に発表される6月の米CPIは一段の鈍化を示すと予想されている。

米国の中古車価格、6月は前月比4.2%下落-パンデミック開始以来最大

  クルーズ&アソシエーツのシニアマネジングディレクター、ダニエル・マルホランド氏は「市場が売られ過ぎていたのは確かだ」と指摘。「インフレ減速や労働市場軟化の兆しがあれば、こうした水準にある相場はもっと上昇しそうだ」と述べた。

Treasury 5-Year Yield Extends Retreat From 2023 High
 
 

外為

  外国為替市場では円が上昇し、対ドルでは3週間ぶり高値の1ドル=141円台前半となった。複数の米金融当局者から、インフレを目標に戻すにはあと数回の利上げが必要だとの見解が示されたが、ドル指数は低下した。

  日本のインフレ期待はおよそ9年ぶりの水準にまで高まっており、日本銀行が物価安定の目標に向かって一定の進展を遂げつつあることを新たに示唆した。

日本のインフレ期待が約9年ぶりの高水準、長期金利に上昇圧力

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1223.84-2.98-0.24%
ドル/円¥141.31-¥0.90-0.63%
ユーロ/ドル$1.1001$0.00340.31%
  米東部時間16時56分

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略グローバル責任者、ウィン・シン氏は「根強いコアインフレは全ての主要中銀の政策に大きな影響を及ぼす」と指摘。「カナダ銀行(中央銀行)とオーストラリア準備銀行(中央銀行)がともに引き締めサイクルを再開したのはそれが理由だ。米金融当局が先月に利上げを見送ったのは間違いだったと私が考えるのもそれ故だ」と述べた。

  「主要な米経済指標の発表が12日のCPIまでない中、ドルは先週からの売り圧力にさらされやすい状況のようだ」と同氏は付け加えた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は反落。夏場で薄商いとなる中、テクニカル要因の売りに押される格好となった。WTI原油価格は前週、週間ベースで続伸し、7日には100日移動平均を上回っていた。

  ICAPのエネルギースペシャリスト、スコット・シェルトン氏によると、原油に特価した商品取引顧問業者(CTA)を除いて相場は「極めて閑散」としており、それがボラティリティーを高める要因となっている。

  市場のセンチメントは、中国経済がデフレの瀬戸際にあることを示した経済統計などで弱含んだ。鉱山大手リオ・ティント・グループは、中国には多くの短期的な経済的課題があると指摘した。イエレン米財務長官が米経済にリセッション(景気後退)のリスクが「完全になくなった訳ではない」と述べたことも、市場参加者の警戒感を強めた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前営業日比87セント(1.2%)下げて1バレル=72.99ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は同78セント(1%)安の77.69ドル。

  ニューヨーク金先物相場は小反落。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の先物8月限は前営業日比1.5ドル(0.1%未満)安の1オンス=1931ドルちょうどで取引を終えた。

  トレーダーは、米金融政策見通しを左右する物価統計に関心を向けている。12日に発表される6月の米CPI上昇率は前年同月比3.1%と、2021年3月以降で最も低い伸びが予想されている。それでも、多くのトレーダーはなお今月のFOMC会合で利上げが行われると予想。そうなれば利子を生まない金の相対的な投資妙味が薄れる可能性がある。

  一方、インベスコは政府系ファンド(SWF)や各国・地域中央銀行が金への投資を増やそうとしているとリポートで指摘。中国は先月、8カ月連続で金準備を増やしたことが7日発表の公式データで明らかになった。経済・地政学的なリスクの中で、中国はドル離れを進めているとみられる。

中国の金買い増し、6月で8カ月連続-ドル離れ進める

原題:‘Priced for Perfection’ Stocks Stay in Tight Range: Markets Wrap(抜粋)

Treasury Yields Extend Retreat From 2023 Highs as Some Say Buy(抜粋)

Yen at Three-Week High, Norwegian Krone Outperforms: Inside G-10(抜粋)

Oil Falls as Light Summer Trading Hardens Technical Resistance(抜粋)

Gold Steadies, Copper Pares Loss as Traders Look Ahead to US CPI(抜粋)

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