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SVBなど破綻地銀、連邦住宅貸付で延命-トップ高額報酬に疑念

更新日時
  • SVBは昨年末時点で150億ドル、シグネチャーは110億ドルを利用
  • サンフランシスコFHLBのCEOには240万ドルが昨年支給された

今年に入り米銀行セクターで発生した深刻な問題は、太陽が照りつけるサンディエゴ周辺のオフィス複合施設で最初の兆しが表れた。暗号資産(仮想通貨)関連企業を主な取引先とする銀行持ち株会社シルバーゲート・キャピタルは、預金の取り付けを乗り切れると投資家に確約していた。連邦住宅貸付銀行(FHLB)からの約43億ドル(現在の為替レートで約6000億円)の資金が命綱だった。

  暗号資産関連のベンチャー企業向けの金融サービスに特化したシルバーゲートは一般消費者に対応する支店網を持たず、辛うじて不動産ローンを提供する程度だった。

  FHLBは金融機関が住宅購入者に貸し付ける資金の確保を目的に大恐慌時代に設置されたが、幾つもの経営不安の地銀がFHLBに依存する状況がすぐに明らかになった。これらの銀行は、日常的な住宅ローン業務にはほとんど関与していなかった。

  ベンチャーキャピタリストやITスタートアップ企業を顧客とするシリコンバレー銀行(SVB)によるFHLB資金の利用額は昨年末時点で150億ドル、シグネチャー・バンクは110億ドル。富裕層向けに有利な条件で不動産ローンを提供していたファースト・リパブリック・バンクは、今年4月までに280億ドル余りに達した。これら四つの金融機関はいずれも経営が行き詰まった。

  90年の歴史を持つFHLB制度は、金融機関の安全装置としての役割が拡大し、1兆5000億ドルを超える規模にバランスシートが膨らむ一方、新たな住宅ローン資金の提供という役割は低下した。それはFHLB制度の目的と、民間機関がなぜこれほど大きな政府支援を享受できるかについて疑念を生じさせる。

  ブルームバーグ・ニュースの取材に大部分が匿名を条件に応じた30人余りの現職および元FHLB当局者や借り手、他の市場参加者の多くは、デューデリジェンス(適正評価)がほとんど実行されないまま素早く貸し付けが行われ、FHLBと金融機関に多くの利益をもたらす状況について証言した。

  金融業界の救済を手配したことに対し、米連邦準備制度が責任者に報酬を支給することは考えられないが、FHLBではそれが実際に行われている。

  SVBやファースト・リパブリックが無謀ともいえる借り入れを開始する中で、サンフランシスコのFHLBの資産は昨年2倍以上に膨らんだ。テレサ・ベイズモア最高経営責任者(CEO)は2022年にボーナス主体で240万ドル(約3億3500万円)の報酬を支給された。米国の銀行破綻の規模としては、SVBが2番目、ファースト・リパブリックが3番目にランクされる。

Federal Support, But No Federal Salary | Annual compensation of each Federal Home Loan Bank’s CEO in 2022
 
 

  サンフランシスコFHLBの広報担当エリオット・スローン氏は、ベイズモアCEOの報酬が第三者の専門家と協議して役員会が設定し、規制・監督当局に開示する目標や他のメトリクスに連動していると説明。さらに「アドバンス」と呼ばれる低利貸し付けについて、「加入金融機関に供与するアドバンスの水準は、関連する全てのリスク要因を考慮する慎重かつ控えめで、注意の行き届いた引き受けアプローチに基づいている」と回答した。

Most Banks Borrow More Than They Originate | More than 80% of the top 100 FHLB users borrowed more from the system than they loaned out as mortgages. Fourteen banks reported no originations.
 
 

  米国の住宅購入者への貸し付けを減らしているにもかかわらず、大手銀行の多くもFHLBから当たり前のように資金調達している。

  10年以降でFHLB制度を最も利用する金融機関のうち、米上位行のウェルズ・ファーゴJPモルガン・チェースシティグループ3行の合計利用額は、市場が比較的落ち着いていた昨年を通じて少なくとも620億ドルに上った。

  届け出資料と連邦住宅ローン記録によると、シティの利用額190億ドルは同行の現金プール全体の3%に相当するが、ローン組成は全米住宅ローン全体の0.3%に過ぎない。ウェルズ・ファーゴは320億ドル利用したが、住宅ローン業務の縮小を今年1月になって発表した。

  米国の住宅ローンの大部分は、ローン債権売却で得た資金を新たな融資に振り向けるロケット・モーゲージのようなノンバンクが組成しており、それらの業者は一般にFHLB制度の利用資格が認められていない。

FHLBs Are Big Money Makers |
 
 

  バランスシートが1兆5000億ドル規模のFHLB制度は、住宅取得能力支援プログラムへの昨年の拠出額が、わずか3億5500万ドルにとどまった。

  ボストンのFHLBの外部役員を21年まで約14年間務めたコーネリアス・ハーリー氏は「きまりが悪い。これは政府支援機関だ。われわれはもっと厳しく要求すべきだ」と話す。

  一方、制度の擁護者は、歴史のねじれは認めながらも、危機発生の場合は特にFHLB制度の迅速な資金提供能力が極めて重要だと主張する。連銀窓口貸出制度の利用や政策担当者による他の非常手段検討に先立ち、FHLBが金融機関の安定に動ける。

  シカゴFHLBのマイケル・エリクソンCEOは「確かに連邦準備制度のもとに走ることはできるだろう。問題はそれに関連する風評リスクだ。加入金融機関と話すと、彼らは汚点が現実にあると感じている」と指摘した。

Sticking to the Mandate | FHLBs have to set aside 10% of their profit for affordable housing grant programs. They rarely do more.
 
 

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(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載) 

原題:A $1.5 Trillion Program for Homebuyers Props Up Banks Instead(抜粋)

(FHLB側のコメントを追加して更新します)
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