俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記 第2部「少年探偵団編」のVol.35──トヨタ  スープラ(70系)

1970年〜1990年代に販売された“ちょっと、古い、クルマ”に焦点を合わせ、クルマをこよなく愛する俳優・永山絢斗が当時の車両の正体を暴く“探偵”に扮します。永山探偵をサポートする“物知り少年”は、自動車評論家の小川フミオ(少年O)と『GQ JAPAN』編集部のイナガキ(少年I)のふたり。今回はバブル期に登場したトヨタのスポーツカー「スープラ(70系)」だ。
トヨタ TOYOTA SUPRA スープラ 70スープラ 永山絢斗
Hiromitsu Yasui

約150万円で購入

少年I:今回のちょっと古いクルマ探偵団がとりあげるのは、トヨタ「スープラ」の70系です。日本市場ではスープラの初代となりますね。

探偵:私が生まれたのが1989年で、スープラの発売は1986年なので、私より“年上”のモデルですね。ただ、今見てもカッコいいクルマだと思います。

70系スープラは1986年に登場。発売当時のキャッチコピーは「TOYOTA 3000GT」と、トヨタ2000GTを意識したものだった。

Hiromitsu Yasui

少年O:70系のスープラは、「セリカXX」の後継モデルで、2代目ソアラをベースに開発された2ドアクーペですね。

探偵:ソアラベースとはいえ、雰囲気はまったく違いますけどね。

「先日取材したソアラとおなじエンジンとは思えないほどスポーティですね」と、永山さん。2代目ソアラとの共通部品こそ多いものの、スープラは独自の味付けが施されていた。

Hiromitsu Yasui

3.0GTターボ リミテッド エアロトップは当時のトップグレード。リミテッドのバッヂが誇らしい。

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少年O:サスペンションシステムとかドライブトレインとか、使えるものはソアラと共用しつつ、ホイールベースもソアラより短くするなどして、キャラクターをよりスポーティに設定したのがスープラです。

探偵:一説によると、当時のトヨタはポルシェやフェラーリを目指していたとか?

足まわりには4輪ダブルウィッシュボーンを採用。ホイールはオーナーの好みにあわせて社外品に変更されている。

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少年O:かもしれないですね。たとえばその後1993年に登場した80系(4代目)では、さらにホイールベースを短くして、初代の“ハイパフォーマンススペシャルティカー”というコンセプトから、いさぎよく、スポーツカーへと変身させましたね。この頃のトヨタといえば、コンセプトカーどまりでしたが、高価な軽量素材のボディに、大排気量エンジンを組み合わせた「4500GT」を手がけるなど、見ていてワクワクさせられたものです。

少年I:今回、探偵団がチェックするスープラは、半田航太郎さん(26歳)が所有する個体で、1987年型「3.0GTターボ リミテッド エアロトップ」です。まだお若いオーナーですが、中学生のときに好きになって、ずっとスープラへの興味を保ちつづけていたとか。

スープラのネーミングは、「セリカXX」の海外名として1978年から使われていた。なお、GRが手掛けた現行スープラはBMWの「Z4」と姉妹車だ。

Hiromitsu Yasui

探偵:購入金額はいかほどだったんでしょうか。

少年I:150万円だったそうで、「当時としては高かったと思います」と半田さんは言っています。ただし、今はもっと値上がりしているとか。スープラに限らず国産ヤングタイマーは高騰していますからね。

少年O:そういえば白い70系スープラといえば、国会議員の高市早苗さんがいまだに所有されていて、先日、奈良トヨタがレストアを手掛けたことが話題になりました。

駆動方式は後輪駆動のみ。ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクとなる。

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リアウインドウには純正のデカールが付く。主張の強かった1980年代のクルマらしい装備だ。

Hiromitsu Yasui
納車直後、屋根を外したら……

少年O:3.0GTターボは、230psの2954cc直列6気筒インタークーラー付きターボエンジン「7M-GTEU型」で後輪を駆動する、初期ではもっともハイスペックな仕様です。

少年I:当時、トヨタ「2000GT」(1967年)が歴史に残る名車という評判は聞いていて、その後継モデルみたいな印象の「3000GT」ってクルマが出るというので、ファンはワクワクしたと聞きました。

「大型のエンジンカバーで覆われていない剥き出しのスタイルが、1980年代のクルマっぽくて僕は好きですね」と、永山さん。

Hiromitsu Yasui

少年O:オーナーの半田さんは、「どうしても前期型、ワイドボディ、エアロトップ、デジパネ(という組合せ)のスープラが欲しくて探して巡り合った1台です」とのことです。購入したのは2017年。「ターボ車にほぼ乗ったことがなかったので、“速い!”が第1印象でした」と、当時ですでに30年前のクルマでしたが、インパクトは強かったようです。

少年I:ハイパワー全盛期ですからね。初期はレギュラーガソリン仕様でしたが、途中からハイオク指定になって、さらにパアーアップがはかられるなど、トヨタの開発陣、気合いが入っていましたね。

「3.0GT」系が搭載した3.0リッターエンジンは、のちにX80系「マークII」のスポーツグレードが搭載した2.5リッターツインターボの「1JZ-GTE」に換装された。

Hiromitsu Yasui

格納式のヘッドライトを採用。

Hiromitsu Yasui

探偵:日産「フェアレディZ」やマツダ「RX-7」に通じる、北米市場を狙ったモデルという印象を受けますけれど、日本での評価はどうだったでしょうか。

少年O:当時は、どんどんパワーアップしていく印象が強く、「もっといけ! もっといけ!」と、思っていました。ただし、乗ってみると、ポルシェやフェラーリとは違うな、と。モデルチェンジして、よりトンガった80系に進化したときは、ついに! と、思ったものです。もっとも少し経ってから振り返ると、70系のありかたでもいいのでは? と、感じるんですが。クルマはその時代の雰囲気で評価も変わってきますから、難しいもんです。

エアロトップは脱着式のルーフとなる。脱着は手動であるが、慣れるとひとりでも数分で作業は完成するという。

Hiromitsu Yasui

少年I:半田さんは「飽きのこないデザイン、内装のカッコよさ。屋根開けたときの唯一無二の開放感が好きなんです」と、話します。「車を停めて、降りて眺めたとき、あぁ……やっぱカッコいいな……と、なります」と、初代の雰囲気を高く評価しています。

少年O:停めたあと、立ち去るとき、振り返って見たくなる、というのは、自動車デザイナーが重要視しているポイントと聞いたことがあります。

「ブラウンのインテリアカラーが、今のクルマにはない色味で新鮮です」と、永山さん。

Hiromitsu Yasui

トップグレードゆえに快適装備満載のインテリア。現代の水準からしても十分満足出来るレベルだ。

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少年I:ルーフは自動格納式ではなく、外からパネルを外すデザイン。そこで半田さんは、「納車されたその足で当時の彼女を迎えに行ったとき、屋根開けて走ったら、大雨が降ってきて、ふたりで急いで屋根を閉めたこともありました」と、思い出を語ってくださいました。

少年O:1980年代のオープンモデルの多くは開閉が手動でしたからね。メルセデス・ベンツが「SL(1989年)」を出したとき、電動ソフトトップが採用されたのが、強く印象に残ったぐらいです。日本で乗るぶんには、ほとんど閉めっぱなしだから、モーターを使う必要がない。それゆえ、個人的には手動でいいと思うんですけど。

スポーツタイプのシートはレザー張りだった。

リアシートはふたり掛け。ただし大人には狭い。短距離移動用と割り切るべきだろう。

当時のクルマでは珍しかったオートエアコンを装備。

熱には弱い

探偵:当時はまだ規制(歩行者頭部保護基準など)にひっかからなかった、格納式ヘッドランプと薄く見えるノーズの組合せは、いま見ても新鮮です。やっぱりスープラにしかないデザインだなぁ、と。ファンが多いのも、よく分かります。

少年I:半田さんは、走行距離4万7000kmの状態で購入して、現在9万5000kmまで走ったそうです。「休日などに洗車して、ドライブしています」と、楽しそうです。

最高出力は230ps/5600rpm。使用油種はレギュラーだ。

Hiromitsu Yasui

トランスミッションは4ATのほか5MTも選べた。

TEMS(Toyota Electric Modulated Suspension)の切り替えスイッチは、センターコンソールにある。

探偵:ソアラとどのぐらい違うんだろう? というのが私の興味でした。実際運転するとかなり違いますね。ホイールベースもサスペンションの設定も違うわけだから当然でしょうが、エンジン音をふくめて、スープラには独自の味がありました。操縦性がソアラよりずっとスポーティなのと、あともうひとつ、エアロトップが意外なほど気持ちよかったです。

少年I:トラブルはかなり少ないとのことですが、半田さんは「7M(7M-GTEU)エンジンが熱に弱いので、真夏に乗らないように気をつけています」と、話します。「どうしても7Mに乗りたい人でなければ、1J(2.5リッター4気筒ツインターボの1JZ-GTE)や1G(2.0リッター4気筒ツインカムの1Gシリーズ)をオススメします」とのことでした。

「着座位置が低いところもスポーツカーらしくていいですね。やっぱりソアラとは違いますね」と、永山さん。

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探偵:そうなのですね。

少年I:オーバーヒートしやすく、ヘッドガスケットが抜けやすいのと、もし壊れたときに部品供給がかなり厳しいからだそうです。あとに記したふたつのエンジンだと、部品もあり維持が楽とのことです。

リアは大型のテールゲート付き。外したルーフは、ラゲッジに格納する。

Hiromitsu Yasui

メーターはデジタルタイプ。シンプルなデザインは、視認性にも優れる。

メーター横にはサスペンションやターボチャージャーの作動状況を確認出来るモニターが備わる。

探偵:オーナーならではのアドバイスですね。

少年I:「何度も手放すか悩んだときはありますが、乗るとやっぱりこれしかない!となる相棒です」と、半田さんのコメントも、紹介しておきますね。

探偵:そういうクルマに巡り会えたことは幸福でしたね。

ニット23万円、パンツ24万円、シューズ11万5500円、以上すべて/ディオール(問い合わせ先 クリスチャン ディオール TEL: 0120-02-1947)

Hiromitsu Yasui
俳優・永山絢斗(ながやまけんと)

1989年3月7日生まれ。東京都出身。2007年『おじいさん先生』(日本テレビ系列)で俳優デビュー。連続テレビ小説『おひさま』や『べっぴんさん』(NHK総合)、『ドクターX〜外科医・大門未知子〜 第5シリーズ』(テレビ朝日系列)、そして2021年には『俺の家の話』(TBS系列)に出演。映画では2010年の『ソフトボーイ』で第34回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。出演情報/

出演情報/
・映画『LOVE LIFE』2022年9月9日(金)全国ロードショー
・ドラマ池波正太郎生誕100年BS特集時代劇「まんぞくまんぞく」(BSプレミアム)2022年12月30日(金)20時~21時28分

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