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米国株に黄信号、労働力不足でインフレ高進の恐れ-20%調整の予想も

  • 債券市場が期待する今後5年のインフレ率は2006年以来の高水準
  • 株式バリュエーションは高め、この先は「負の材料の壁」との見方も

7日発表の米雇用統計は予想を下回り政府からの景気支援継続を当てにする株式投資家を安心させたが、一段の相場上昇をもたらす起爆剤を欠きつつある市場のリスクも同時に示唆した。労働力不足はインフレ圧力を高める恐れがあるからだ。

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  S&P500種株価指数は雇用統計発表後に過去最高値を更新したが、一部の市場参加者はすぐに、インフレ加速とそれによる最終的な金融引き締めのリスクを打ち消して余りあるほどの景気刺激策が打ち出されるとは限らないと気付いた。昨年の売りの後の大幅反発で市場は泡立ち気味でバリュエーションが高めになっており、一段高をもたらす要因に欠けるとの懸念は強まっている。

  10日の米株式市場では、インフレ加速と金利上昇の影響を最も受けやすいと見なされるテクノロジーおよびインターネット関連銘柄が下げの中心となった。NYSE・FANG+指数は3.6%急落し3月以来の低水準となった。 ハイテク株の多いナスダック100指数のさらなる下落に備えるコストは高くなり、CBOE・NDXボラティリティー指数は16%上昇し約6週間ぶりの水準に達した。

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  ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、マット・メイリー氏は「財政および金融による刺激策は全て織り込み済みだ。経済は再開しつつあるが、この先には負の材料の壁が立ち上がりつつある」とし、「米連邦準備制度は弱い雇用統計結果を一時的なものと考える可能性があり、金利上昇傾向と成長織り込み済みの現状を踏まえると、衝撃吸収余地は急激に縮小した」と語った。

  米国債弱気派は労働市場に人々を戻す賃金引き上げの必要性を雇用統計が示唆したとみており、そのような展開は10年物利回りが2%に達する道を開くと一部で考えられている。債券市場が期待する向こう5年の消費者物価上昇率は2006年以来の高水準に達した。

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  モルガン・スタンレーのストラテジストは、労働力不足が株式相場を押し上げてきた景気回復への重しになる可能性を指摘。同社株式ストラテジストのマイケル・ウィルソン氏は9日のリポートで、「弱い雇用統計は金融当局からの一段の緩和か、少なくとも早期の緩和引き揚げがないことを意味すると多くの人が考えた」が、「当社の見方では、株式のリスクプレミアムはこれらのコストと供給の問題を過小評価している」と指摘した。

  このプレミアムは、安全資産でなく米国株を保有することから生じるリスクをカバーするため投資家が求めるものだが、米国株の上昇が限界に近づいている可能性を示唆している。S&P500種の株式益回りと10年物米国債利回りのスプレッドは10年余りで最小、予想利益ベースで07年以来の小ささになっている。

  モルガン・スタンレーのストラテジストらは米国株が来年には最高値を再び更新するとみているが、今年は横ばいで最大20%の調整があると見込んでいる。

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原題:
Stocks Face Inflation Risk in Market With Fewer Reasons to Rally(抜粋)

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