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ワインラバーも注目! 新たな歴史を刻む、オーストラリアワインの今を訪ねて
世界のワイン産地においてニューワールドと呼ばれるオーストラリアだが、200年の歴史の中で伝統が築かれ、革新を遂げている。盛り上がりを見せるガストロノミーシーンと合わせ、ますます注目度が高まるオーストラリアワインの魅力を探るべく、南オーストラリア州、ビクトリア州の造り手を訪ねた。
南オーストラリア州を代表するワイナリーにして、マクラーレン・ヴェイルのランドマーク的な存在。1912年創業のダーレンベルグ4代目、チェスター・オズボーンが2017年に開いたセラードアがダーレンベルグ キューブだ。キューブ型のアイコニックな建物は全4フロア。醸造にまつわる展示室や、ダリやピカソの貴重なコレクションが並ぶギャラリーが連なり、館内を巡ることでオズボーンの思想や哲学に触れられる。ここでは、ワインのブレンディングも体験できる。「わずかな配合の差が、大きな味の違いを生む」と、オズボーンが話す通り、3種のベースワインの個性の見極めが不可欠。楽しみながらワイン造りの一端に触れられる。
58 Osborn Rd, McLaren Vale, South Australia 5171
Tel./+61-8-8329-4888
www.darenberg.com.au/darenberg-cube/
ブルガリアにルーツを持つ女性醸造家、イェレナ・ブルックスが2007年にマクラーレン・ヴェイルで創業したダンデライオン ヴィンヤーズ。国内で最も権威あるワイン誌『James Halliday Wine Companion』の5つ星など、数々の高評価を獲得する新星だ。マクラーレン・ヴェイルを筆頭に、イーデン・ヴァレー、バロッサ・ヴァレーなどのブドウ栽培農家と協業。シングルヴィンヤードのワインで、南オーストラリアの豊かで多様性に富んだテロワールを表現する。「ワインはファッションに通じる」と語り、よりフレッシュなワインへ変化する時代のニーズをとらえ、クオリティの追求に余念がない。サステナビリティへの取り組みも率先して行い、2023年春、その世界観を伝えるテイスティングルームも完成した。
191 Chaffeys Rd, McLaren Vale, South Australia 5171
Tel./+61-8-8323-8979
https://dandelionvineyards.com.au/
オーストラリアワインの代名詞ともいえるブドウ品種・シラーズ。その最高峰と評されるのがヘンチキのフラッグシップ「ヒル・オブ・グレース」だ。ドイツ系移民のヨハン・クリスチャン・ヘンチキが1862年に興したワイナリーは、当時植樹したブドウ畑が今も現役。ワインに唯一無二の個性を与えるのも樹齢150年を超える古木だ。収量は限られるが果実は年々力強さを増し、人的介入を最小限に醸造を行うことで、純度の高い、濃厚かつ滑らかなワインが生まれる。教会の前に広がるブドウ畑、19世紀半ばの納屋の石壁を活用したセラードアなど、ワイナリー全体が生きた遺産として、土地のワインの歩みを今に伝えている。
1428 Keyneton Road, Keyneton, South Australia 5353
Tel./+61-8-8564-8223
www.henschke.com.au/
バロッサのテラスを見下ろす高台に立ち、地下セラーに7000本にも及ぶワインを所蔵。有志のワインメーカー、生産者、愛好家の集まりである「バロンズ オブ バロッサ」により設立されたザ バロッサ セラーは、産地の歴史を伝えるミュージアムであり、熟成度合いを検証する場だ。バロッサ最古のワイナリーのひとつであるセッペルツフィールドの、100年間熟成された酒精強化ワインのサンプルは圧巻。ほか名だたるワイナリーの過去10年を超えるヴィンテージワインがずらり揃う。現在、要予約・チケット制のイベントを開催しているが、今後はより多くのゲストが利用できる機会も考案中とのこと。専属のシェフ、ライアン・エドワーズの発酵調味料を生かした料理も、オーストラリアの今のフードシーンを象徴している。
991 Stockwell Rd, Vine Vale, South Australia 5352
Tel./+61-8-563-0650
www.thebarossacellar.com.au/
畑の景色を切り取る大きな窓が印象的なテイスティングルームは、息をのむほどの美しさ。冷涼な気候を生かし、高品質なワインを産するビクトリア州ヤラ・ヴァレー。その産地を牽引するワイナリーがヤラ・イェリングだ。1969年、植物学者ベイリー・カローダスにより創設。酒精強化ワインが流行していた時代に、オックスフォード大学在学中に出会ったヨーロッパの洗練されたワインに感銘を受け、帰国後に理想のブドウ畑をヤラ・ヴァレーに求め、銘醸地へと導いた立役者でもある。無灌漑、低収量をはじめ、カローダス独自の栽培、醸造理論を現在も継承。果実味豊かでエレガントな味わいには、偉大なワインの風格がある。オーストラリア一と評されるピノ・ノワールは、輝かしい味わいの余韻が長く続く。
4 Briarty Rd, Gruyere, Victoria 3770
Tel./+61 -3-5964-9267
www.yarrayering.com/
メルボルンから車で45分、ヤラ・ヴァレーのワインツーリズムで外せないスポットがドメーヌ・シャンドンだ。シャンパーニュメゾン最大手のモエ・エ・シャンドンが世界で展開するスパークリングワインブランドで、オーストラリア進出は1986年。シャンパーニュ製法の高品質なスパークリングワインは他の規範となり、ヤラ・ヴァレーをオーストラリアきってのスパークリングワインの産地へと導いた。セラードアは、テイスティングカウンター、サロン、ブティックを備え、日本でも人気のブリュットやロゼに加え、貴重なミレジムボトルやレッドスパークリングなど全アイテムを試飲できる。ブドウ畑の絶景を望むテラスでのブランチは格別。
727 Maroondah Hwy, Coldstream VIC 3770
Tel./+61-3-9738-9200
www.chandon.com.au/
「ピノ・ノワールの産地における、カベルネ・ソーヴィニヨンのユニークなポイント」。ワインメーカーのベン・ポルテは、ワイナリー周辺の環境についてそう話す。ボルドーの名門の9代目に当たる父、ドミニク・ポルテが2000年に創業。ワイン界のサラブレッドがヤラ・ヴァレーを選んだのは、自身のワイン観の根幹にあるカベルネ・ソーヴィニヨンを追求するためだ。伝統製法に科学的なアプローチを加え、クラシックを刷新するのがベンのワイン造りで、躍動感のあるスパークリングワインにも定評がある。セラードアはダイニングを併設。シャルキュトリーやエスカルゴなど、フレンチスタイルのフードは、ワインの味わいをより深めてくれる。
870-872 Maroondah Hwy, Coldstream, Victoria 3770
Tel./+61-3-5962-5760
www.dominiqueportet.com/
メルボルンは、ヤラ・ヴァレーにも好アクセス。重要文化財を活用したインターコンチネンタル メルボルンをはじめ、海外からのツーリストを迎え入れるホテルも充実し、ワインツーリズムの拠点になっている。