", コンテンツにスキップする
",
Subscriber Only

ルノーと日産、資本関係見直しや協業拡大合意-対等関係で再出発

更新日時
  • ルノーが日産株を信託、43%から15%に下げ-日産が売却先筆頭候補
  • 「今までよりいい形でチャンスを最大化」、EVや新興市場で協業も

日産自動車と仏ルノーは6日、資本関係の見直しや協業の拡大などについて合意したと発表した。ルノーによる日産への出資比率を43%から15%に引き下げることなどを骨子としている。電気自動車(EV)などの変革の波が押し寄せる中、企業連合(アライアンス)は対等な関係で再出発する。

Nissan Motor Headquarters As The Automaker Boasts Brexit Advantage With Rare U.K. Battery Supply
日産のロゴ
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  両社の関係はルノーが1999年、経営危機にひんしていた日産に対して救済出資したことから始まった。ルノーが日産株約43%を持つのに対し、日産が保有するルノー株は15%にとどまり、さらにはフランスの法律により議決権がないことから不平等な関係が続いてきたが、今回の合意により解消のめどがついたことになる。 

  両社の発表資料によると、資本面ではルノーが日産株28.4%をフランスの信託会社に信託し、その議決権はルノーが推薦する日産取締役の選任や解任など一部のケースを除いて中立的に行使される。

  ルノーは信託株が売却されるまでの間、配当金や株式売却収入などの権利を持ち、特定の期間内に売却する義務は負わない。また売却先としては日産が筆頭候補として優先的地位を持つという。これにより日産が保有するルノー株の議決権が行使可能となる。

  数カ月にわたって関係の再構築について協議を行ってきた日産とルノーは先月30日、資本関係の見直しなどについて基本合意したことを発表。両社の取締役会が6日までにそれぞれ承認し、今回の発表に至った。

  ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は6日、日産の内田誠社長兼CEOとともにブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ、「今回の新たな合意は事業機会と簡潔で明確なルールに基づくものだ」と説明。「事業機会という点では、過去10年よりも現在の方がはるかに大きい」と述べた。

ルノーと吉利、パワートレイン合弁設立で枠組み合意-1万9000人雇用

ルノーのEV新会社にクアルコム部門が出資へ、戦略的協力を拡大

ルノーと日産の両CEOがブルームバーグテレビジョンで話す
Source: Bloomberg

  デメオCEOはこれに先立ち、三菱自動車も加えた3社によるロンドンでの共同記者会見で、過去には「2つの会社を一つにしようと思っていた」が、「それには意味がない」と思うに至ったとコメント。「とにかくアライアンスを活用してわれわれのビジネスチャンスを最大化しなければならない。今までよりいい形で過去数年間以上のものをこれから出していかないといけない」と述べた。

  保有する日産株の売却については日産にとってネガティブにならないように行うことが重要だとし、秩序を持って実施していくと述べた。数カ月で売却することは考えておらず、「ある程度時間がかかる」とした。

  松野博一官房長官は7日、「関係者が納得する形で議論が結実したことは喜ばしいこと」とし、「これを機にウインウインの形で協業がさらに進展し、グローバルな競争力を高める取り組みが成功に向かうことを期待」すると述べた。日産株は同日の取引で3日続伸となり、一時前日比3.1%高の487円と約2カ月ぶりの高値を付けた。ルノー株も6日のパリ市場で同0.3%高の39.12ユーロで取引を終えている。

  今回の合意ではルノーによる日産への出資比率引き下げのほか、中南米やインド、欧州でのプロジェクトなどに新たに取り組む。

  中南米の協業ではメキシコで日産が20年ぶりにルノー向け新型車を生産するほか、共通プラットフォームでの小型EV2車種も投入する。欧州では2026年以降のCセグメントEVでの協業を模索する。

Renault SA Showrooms As Emissions Testing Investigators Seize Computers From Automaker
ルノーのロゴ
Photographer: Balint Porneczi/Bloomberg

  ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、ルノーの出資比率引き下げは想定通りだとした上で、「日産にとって経営の自由度が増すということで、結果としてポジティブ」と評価した。

  一方で、企業連合のプロジェクトとして挙げられた内容は今まで滞っていたものが進み始めるということであって、急にポジティブな効果が見込めるわけではないとの見方を示した。その上で、「アライアンスであればやっていてしかるべきだったことばかり」と指摘した。

  ルノーが設立するEV新会社「アンペア」について日産は最大15%を出資する意向。同社については三菱自も参画を検討する。日産と三菱自はルノーが別に取り組む内燃機関やハイブリッドパワートレイン技術のプロジェクト「ホース」の顧客となる予定。平行して全固体電池やソフトウエア、自動運転など既存の技術分野でも協業を推進するという。

  デメオCEOはアンペアへの出資は日産が決めることで強要していないとした上で、ルノーの保有比率50%は絶対に維持するとコメント。一方、ホースに折半出資する協業先である中国・浙江吉利控股集団については、アンペアに出資させる計画はないとした。

  三菱自の加藤隆雄CEOは会見で、排ガス規制の厳しい欧州ではEV導入を検討する必要があり、ルノーの「アンペア」から受けるOEM(相手先ブランドによる生産)供給は「われわれにとって非常に魅力的なソリューションの1つになると確信している」と語った。三菱自の欧州でのEV商品戦略の一翼を担う「アンペアへの資本参加について検討していく」と続けた。

  会見では日産の内田社長兼CEOも含めた各社トップは今後は「未来指向型」の関係になることをそれぞれ強調した。

不満忘れ、未来を

  日産の取締役も務めるルノーのジャンドミニク・スナール会長は、日産が「15%の保有をしていたのに議決権がないなんて許せないというのは分かる」と理解を示した上で、ルノーも43%を持ちながら日産側との取り決めなどで「全く影響力を行使できなかった」と語った。そういったこれまでのお互いの不満は忘れ、「未来を見据えよう」と呼びかけた。

  ルノーと日産は今回発表された内容に関して拘束力のある枠組み合意を締結し、23年1-3月期末までに最終契約を結ぶ予定。最終契約に規定された取引は規制当局の承認を含むいくつかの条件を前提としており、同年10-12月期に完了する見通し。

  両社の新たな契約は従来のものと置き換えられる。新たな契約の有効期間については、当初15年間となる予定。ルノーと日産は引き続き相互の取締役会に2人を推薦する権利を有し、3社の利害調整の場であるアライアンスオペレーティングボードも存続する。

  自動車業界ではEVや自動運転の開発競争や新興勢力の台頭で転換期を迎えている。これまでも共同での技術開発や部品購買などで協力してきた両社は、今後は対等な立場から協業をさらに拡大し生き残りを目指すことになる。

(株価や官房長官のコメントなどを追加して更新します)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE