コンテンツにスキップする

米上場も株価急落の「空飛ぶバイク」、巻き返し狙う-経営陣入れ替え

  • 日本企業初となる米SPAC上場も株価は1ドル以下に低迷
  • 今後2年間に中東で1000台規模の販売目指す-伊東CEO

「空飛ぶバイク」の販売などを手がけるエアウィンズ・テクノロジーズは、日本企業初となる特別買収目的会社(SPAC)との合併により米国で上場した。しかし株価は急落、SPAC上場の失敗例となった。社長は交代、経営陣を入れ替えるなど、巻き返しを狙っている。

Inside The Tokyo Motor Show 2019
エアウィンズのホバーバイクは7770万円で販売
Photographer: Shiho Fukada/Bloomberg

  新しく最高経営責任者(CEO)に就いた伊東大地氏(47)はブルームバーグの取材に応じ、5月に社外取締役3人を入れ替えた理由について「SPACの失敗」を挙げた。後任にはインベスターリレーションズ(IR)に精通した人物を選出したという。

  2月、米ナスダック市場にSPAC経由による上場を果たしエアウィンズの株価は上場直後から急落、現在は1株1ドル以下と紙くず同然だ。当初6億ドル(864億円)を想定していた時価総額は、現在2700万ドル程度まで縮小した。

米ナスダックにSPAC上場したエアウィンズの株価動向 | ー期待から上昇も、上場後に急落ー
 
 

  エアウィンズが米金融当局に提出した開示資料には「ゴーイング・コンサーン」、すなわち、事業活動の継続の前提に重要な疑義を抱かせる状況が存在する場合の注記が記載されている。伊東CEOは「日本のSPACがここでなくなるのは悲しい」と、起死回生を狙う。

  SPACとはあらかじめ買収の受け皿となる法人を上場させ、有望な未上場企業と合併させてその企業を実質的に上場させる仕組みだ。通常のプロセスに比べて迅速な上場ができるとされている。

中東で売買契約へ

  ここにきて事業面では明るい兆しも見え始めた。伊東氏によると、近くアラブ首長国連邦(UAE)でホバーバイク(空中移動バイク)約20台の売買契約を締結する。これを足掛かりに今後2年間に中東地域で1000台規模の販売を目指すという。

relates to 米上場も株価急落の「空飛ぶバイク」、巻き返し狙う-経営陣入れ替え
アブダビで商談する伊東CEO
Source: A.L.I. Technologies

  同製品の価格は1台7770万円で、これまでの販売実績は数台にとどまっていた。今回の契約は「はじめの一歩にすぎない」とし、今後サウジアラビア、バーレーン、クウェートなどに広げたい考えだ。

  同氏によると、「UAEは規制を緩め、世界一エアモビリティーを発展させたいといのが国家政策としてあり、砂漠という地形を考えてもとても合っている」という。今回の契約の他にも国境警備や人命救助での使用を視野にドバイ警察と協議を継続している。

  ホバーバイクは水面や砂漠でも走行が可能なため、特に中東地域での需要が強いという。ヴォルト・インベストメンツとUAEに合弁会社(JV)を設立する計画だ。

資金調達にめど

  赤字経営の同社にとって、資金調達が喫緊の課題だ。伊東CEOは年内に1-3億ドルの調達を資本市場で複数回に分けて実施する計画を明らかにした。また、投資家の「めどはついている」と話す。

  収益を伸ばしながら、コスト削減にも取り組む考えだ。部品の発注で外部委託を増やすなど、現在年間30億円規模の費用を今後3-4カ月以内に半減する考えで、2025年には黒字化が可能だという。

  同社はエアモビリティー社会の実現を目指し2016年に設立、ホバーバイクの製造・販売、人工知能(AI)を搭載したドローンの研究開発などに取り組んできた。昨年3月にはプロ野球の北海道日本ハムファイターズの本拠地開幕戦セレモニーで、新庄剛志監督が特別仕様モデルに乗って登場するなど話題を集めた。

  スタートアップだった同社はこれまで多くの出資者に支えられてきた。株主にはセガサミーホールディングス名古屋鉄道中日本航空京セラ三菱電機などの大企業が名を連ねる。

  伊東氏はエアウィンズの社外取締役らによって3月、最高経営責任者(CEO)に起用された。それまでクレディ・スイスやドイツ銀行で債券資本市場に従事していた。創業者でメリルリンチ出身の小松周平氏は経営から完全に退いた。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE