FASHION / TREND & STORY

デュア・リパやドージャ・キャットが愛用! “トゲトゲ”のニットでブレイクしたロンドン発のチェット・ロー(CHET LO)【若手デザイナー連載】

ロンドン発のチェット・ロー(CHET LO)は、角のようなトゲトゲしたデザインと伸縮性のあるニットで注目を集める気鋭ブランド。一度見たら忘れないアイキャッチーな作品は、デュア・リパやドージャ・キャットなど個性豊かなアーティストをも魅了している。中国系アメリカ人のデザイナーがニットで表現したい「アジア文化」の姿とは?

チェット・ロー(CHET LO)の代表作であるトゲトゲのスパイキーシリーズ。2023-24年秋冬コレクションではオール黒で登場した。

ロンドンの名門セントラル・セント・マーチンズのニットウェアコースを卒業後、メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)やプロエンザ スクーラーPROENZA SCHOULER)などでインターン経験を積み、2021年に自身の名前を冠したブランド、チェット・ロー(CHET LO)をスタート。彼のデザインの根底にあるのは「ノスタルジックなアジア」、日本の昔のコミックやゴジラ、ウルトラマンといった特撮作品からインスピレーションを得ているという。

2023-24年秋冬コレクションでは、これまでのカラフルでフューチャリスティックなイメージから一転、ブラックを基調としたミニマルでシックなコレクションを発表。大胆にカットされたレザーシリーズを前面に打ち出し、サステナブル なデニムメーカーのイスコ(ISKO)、ジュエリーブランドのハットン ラブス(HATTON LABS)とのコラボレーションなど、これまでにない試みとともに新しい世界観を表現している。そこにはどんな思いが込められているのだろうか? デザイナーのチェット・ ローに尋ねた。

グラデーションのように黒から赤へと変わるデザインで、暗闇の中の光を表現している。

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──当初、自身のブランドを立ち上げる気はなかったとのことですが、そこからファッションの世界でやっていこうと決心した一番の理由はなんですか?

そうなんです。自分のブランドを持つつもりはありませんでした。この世界に飛び込んだのは偶然ですね。私はずっと年金付きの安定している仕事に就きたいと思っていました。自分で事業を行うことによってストレスに悩まされることがないようにしたかったからです。しかし、現実は違う結果に。私がセントラル・セン ト・マーチンを卒業したのは、ちょうどパンデミックの時期で、ロンドンのどのブランドにも就職するのが難しかったんです。そういった経緯で、生き残るために自分のブランドを作ることになりました。

車に轢かれたようなユニークな加工が印象的なレザー。

──セントラル・セント・マーチンでニットウェアを専攻した理由は?

テキスタイルとファッションが大好きだからです。ニットウェアは、テキスタイルとファッションの2つにおける美しいマリアージュだと思っています。糸からはじまり服として完成させるまで、作品を作り上げることができるのは本当に楽しいことです。

──2023-24年秋冬コレクションでは、これまでの幻想的でカラフルなイメージから一転してブラックを基調としています。また、レザーを使ったデザインも新鮮でした。「Bioluminescence(生物発光)」からインスパイアされ、枠を取り払った新しい世界で最も表現したかったこととは?

私が経験した暗い時期をこのコレクションで表現したいと思いました。暗闇の中に光を見出すことをテーマにし、そういったメッセージを込めています。

アジア文化の真の姿を伝えたい

ローのルーツである仏教の儀式“拜神”からインスパイアされたデザイン。

──ご自身のルーツでもある東アジアの文化をデザインに取り込んでいますね。ブランドを通して伝えたいことをお聞かせください。

私は「アジア文化」と「アジアデザイン」の物語を書き改めたいと思っています。例えば、古典的な龍のイメージや中国磁器の壺のアイデアは、植民地主義的な歴史が多く、現在のアジア人が身につけるものやデザインとは異なります。私は、アジア文化の真の姿を未来志向の強いメッセージとして伝えたいのです。

2023年春夏コレクションより

──ブランドのシネグチャーアイテムでもあるトゲトゲのニットウェアのアイデアはどのように浮かんだのでしょうか?

学生時代の卒業制作で、ニットウェアを1枚も入れていないことを理由に“落第”と言われたことがあったんです(笑)。そこから、古いニットの技法書に潜り込んでこの技法を見つけ出して、実際にやってみたらものすごく楽しくて。それ以来、ブランドの代表的なデザインとなりました。

2023年春夏コレクションより

2023年春夏コレクションより

ドージャ・キャットとシザのMVの衣装を担当

ドージャ・キャット(左)とシザ(右)のコラボレーション曲「KISS ME MORE」のミュージックビデオにて着用したスパイキースーツ。 Photo: Courtesy of RCA RECORDS

──ドージャ・キャットデュア・リパシザなど、独自のオーラと個性を持つアーティストがあなたの作品のファンですが、それについてどう思いますか?

自分自身が熱狂的なファンになっているアイコンのような人たちと一緒に仕事ができたことをとてもありがたく思っています。自分の作品と素晴らしいヒット曲が結びつくというのは、とてもシュールな体験ですね。ドージャとシザのMV制作の衣装のために、期待に胸を膨らませながら夜遅くまでニットを編んでいたことを思い出します。

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デザイナーのチェット

──5年後、10年後に叶えたい夢や目指したいゴールはありますか?

チームと自分自身をハッピーにすることですね。自分の帝国を作り、ファッションだけでなく、人生のあらゆる場面で喜びを広げられるようになりたいです。

Photos: Courtesy of Chet Lo