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みずほFGなどが米資本市場での取り組み加速、積年の野望果たせるか

  • みずほFGのグリーンヒル買収は三井住友FGの提携拡大発表の翌月
  • 米国の資本市場での邦銀の存在感は依然低い

米投資銀行グリーンヒルは、世界の企業の合併・買収(M&A)助言ランキングで75位の小さなブティック型投資銀行だが、みずほフィナンシャルグループ(FG)が買収において提示した金額は市場価格の2倍以上だった。

Japanese Mega Banks Ahead of Earnings Figures
みずほFGは米グリーンヒルを買収
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

     低金利が続き、さえない収益に直面する国内事業を受け、みずほFGなど国内メガバンクグループは、近年、世界最大の資本市場である米国での取り組みを加速させている。

     三井住友フィナンシャルグループ(FG)は先月、米ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループの持ち分を引き上げることで合意し、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は米モルガン・スタンレーと10年以上の提携関係にある。

     メガバンクの米市場における存在感は大きくない。これまでの同市場における事業展開は、主に債券発行や企業向け融資などだ。ブルームバーグのデータによると、3メガバンクとも世界のM&Aランキングのトップ10には入っておらず、今年の米国の株式公開引き受けのトップ20にも入っていない。  

     みずほFG自身が認めているように、ウォール街の大手と伍(ご)していくためには規模が足りず、競合から人材を引き抜いてくるのも難しい。米国みずほ証券のジェリー・リッツィエーリ社長兼最高経営責任者(CEO)はインタビューで、グリーンヒルの買収により、M&A分野で80人以上のマネージングディレクターが加わることになると語っている。

     「厳しい市場環境の中では、大手の金融機関に行くような人材を呼び寄せるのは不可能」と、経営者や役員、富裕層の投資家を顧客に持つブリッジパーク・アドバイザーズのマネージングパートナー、ステファン・セリグ氏は指摘する。

     古くは1988年に野村ホールディングスがワッサースタイン・ペレラと提携し、その後、2008年の金融危機の際にはリーマン・ブラザーズの資産を買収したように、日本の金融機関は海外に成長のドライバーを求めて買収や出資をしてきた。

No Growth | Japan's megabanks have sluggish return on equity
 
 

     さらには、株価純資産倍率(PBR)1倍割れなど、資本効率に対する市場の厳しい目線が、メガバンクなどが米資本市場での事業拡大の取り組みを加速させる要因となっている。自らのバランスシートを使わず、より収益性の高いフィービジネスに移行するには投資銀行業務の拡大が欠かせないからだ。メガバンクが潤沢な資金を持ち、ここ数年で最高の利益を見込んでいることが、買収のための新たな武器となる。

     三井住友FGの太田純社長は、今月の投資家向け説明会で「中長期的にはバルジブラケット(一流の投資銀行)に次ぐポジションを目指す」と述べた。ジェフリーズとの提携拡大は、競合との差を埋めるためにも必要なことだと語った。

     ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、プリ・デ・シルバ氏は、メガバンクについて、「バランスシートレンディングは、特に米国では困難。そのため、資本市場は残された数少ない有効な手段のひとつかもしれない」という。

Sobering Decline | Greenhill's shares had slumped before Mizuho's offer
 
 

     資本市場ビジネスにはリスクもある。その一つが、債券発行やM&Aの件数などが上下に激しく振れ、市場のボラティリティーが高いことだ。ブルームバーグがまとめたデータによると、経済の不確実性と資金調達市場の厳しさを背景に、今年、世界的なM&Aの規模は約44%減の9730億ドルに落ち込んだ。

     市場の落ち込みを受け、グリーンヒルのようなブティック型投資銀行の売却が相次いでいる。グリーンヒルの株価は2009年のピークから93%も下落していた。ドイツ銀行は先月、英国で最も有名なブティック型投資顧問会社ヌミスの買収に合意。3月には、カナダのトロント・ドミニオン銀行が13億ドルで米国の証券会社カウエンの買収を完了した。

     フィッチ・レーティングス・ジャパンの金融機関担当ダイレクター、西澤かおり氏は、メガバンクを待ち受けるリスクとして激しい価格競争やM&A市場の低迷、高い固定費による収益性の圧迫を挙げる。ブルームバーグ・インテリジェンスのデ・シルバ氏は、重要な人材の確保も課題の一つだとしている。

     みずほFGにとって、今回のグリーンヒルの買収は2015年に英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドの北米向けの企業向け貸出債権の大部分を30億ドルで買収して以来の大型案件となる。

     クレディットサイツのアジア太平洋リサーチ部門の共同責任者であるプラモッド・シェノイ氏によれば、市場価格の2倍以上を投じるみずほFGによるグリーンヒル買収は、決して安くはないものの「われわれはこの買収が賢明なものと見ている 」と述べた。

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