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MUFGなど銀行株が反転下落、世界的金融不安後退も払拭至らず

更新日時
  • 一連の施策で金融不安落ち着くのか投資家確信持てず-三井住友DS
  • 財務相「日本に与える影響注視」、官房長官は「金融システム安定」

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)などの銀行株が午後に入って下げ幅を拡大した。週末にスイスの銀行大手UBSグループによるクレディ・スイス・グループの買収合意や世界の中央銀行が米ドル流動性供給の拡充で協調行動を取ることが表明され、金融不安を巡る警戒感が後退。午前の取引では買い優勢の局面もあったが、不安払拭(ふっしょく)には至らず下落して取引を終えた。

  MUFGの株価は一時、前営業日比2.1%高まで上昇、三井住友フィナンシャルグループも同2.1%高の5366円まで上昇したが、海外市場で金融株が下落すると、午後の取引で下げ幅を拡大。終値はそれぞれ1.8%安、1.7%安だった。みずほフィナンシャルグループも後場に下げ幅を拡大し、2.3%安の1825.5円で引けた。

Credit Suisse Crisis Nears Finale as UBS Discussions Heat Up
UBSがクレディ・スイスを買収へ
Photographer: Pascal Mora/Bloomberg

  三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、「一連の施策でまだ不安が落ち着くのか投資家は確信が持てないのではないか」と指摘。「不安は後退したものの、払拭までには至っていないということだろう」との見方を示した。

  UBSによる買収は30億スイス・フラン(約4300億円)規模の株式交換になり、合意には広範囲な政府保証と流動性供給が含まれる。また、米連邦準備制度理事会(FRB)と日本銀行、欧州中央銀行(ECB)などの主要6中銀は19日、米ドル・スワップ取り決めの下で、ドルの流動性供給拡充に向け協調行動を取ると発表。国際金融システムの緊張が高まる中、ドル調達難を緩和する狙いがある。

     鈴木俊一財務相は20日午前、UBSによるクレディ・スイス買収について「日本に与える影響を注意深く見極める」と述べた。6中銀による流動性供給についても評価した上で「しっかり注視していく」とした。また、松野博一官房長官は同日の定例会見で「現在、日本の金融機関は総じて充実した流動性や資本を有しており、金融システムは総体して安定していると評価している」と語った。

  クレディ・スイス証券などが入っている東京都港区のオフィスビルでは同日午前、混乱はなく普段通りの様子だった。

  岡三証券の松本史雄チーフストラテジストは、「クレディ・スイスが破綻して市場が大混乱するのではないかという不安は取りあえずなくなった」と指摘。一方、複数の大手銀行が預金を預け入れることで合意した米ファースト・リパブリック・バンクの株価が17日に大きく下落するなどしていることから、日本の銀行株も「もう少し神経質なマーケットは続くだろう」とみていた。 

銀行株が反転下落、金融不安払拭に至らず | TOPIX銀行業指数の推移
 
 

  松井証券の窪田朋一郎マーケットアナリストは「何らかの問題が発生したときには当局が積極的に対策を打つことは確認できた」と指摘。国内金利は大きく上昇していないことから「金利上昇に伴う悪影響は緩和されており、日本のメガバンクは海外の銀行ほど警戒されていないだろう」と述べた。

  また、地方銀行についても「金利が上昇した際の損失に対する金融庁のチェックが非常に厳しい」として、経営破綻した米シリコンバレー銀行(SVB)と同様の事態は招かないだろうとみている。

  地銀株も軟調で、山形銀行が4.2%安の1025円、栃木銀行が3.9%安の268円と下落したほか、ふくおかフィナンシャルグループ武蔵野銀行がそれぞれ3.7%安、あいちフィナンシャルグループが3.6%安などと下落した。

  岡三証券の松本氏は「日銀の金融政策の修正により、貸し出し利ざやが改善するという期待があったが、金利が大きく下がったことでその期待が短期的に剥落した」と指摘。メガバンクと比べて貸し出し業務の占める比率が高い地銀株にとってより悪材料になっているとの見方を示した。

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(株価を終値にして記事を更新します)
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