ソフトバンク、ペイペイを22年度以降に子会社化へー優先株を転換
日向貴彦-
社長個人の200億円自社株買いは終了、平均取得価格は1435円
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株価は数倍上昇狙う、10年は社長続ける気概-宮川氏
国内通信大手のソフトバンクの宮川潤一社長兼最高経営責任者(CEО)は11日の決算会見で、傘下の電子決済サービス企業ペイペイを2022年度以降に連結子会社化する方針を明らかにした。
ソフトバンクでは現在、ペイペイを持分法適用会社としており、25%出資している。その他の出資比率は親会社のソフトバンクグループが50%、子会社のZホールディングスが25%。宮川社長によると、保有する優先株を転換する形でペイペイを子会社化する。
また、宮川社長は会見で会社の見える化を進めるとし、セグメント別の営業利益計画とペイペイなど注力企業の重要業績評価指標(KPI)の公表を開始すると説明。前期(21年3月期)のペイペイの決済取扱高(GMV)が3兆2000億円と前の期に比べ2.6倍だったことも明らかにした。
ソフトバンクでは、国内モバイル事業で料金の値下げ競争が激しさを増す中、金融ビジネスなど新領域のほか、海外や法人向け業務を拡大していく方針だ。ペイペイの子会社化でより多くの収益を取り込んでいくと同時に、将来の株式上場にも備えることができる。
宮川社長はペイペイの成長戦略について、同事業がインドから技術を持ち寄り進化したように、「違う国で活躍してくれないかという思いある」と述べ、海外で独自展開するのかパートナーとやるのかを考えていきたいと語った。
前社長の宮内謙会長は2月の決算会見で、証券会社からペイペイの早期の株式公開提案を受けたことを明らかにし、時期については米国市場を例に挙げ「いつでもできる」と発言。評価額はユニコーンと呼ばれる1000億円を超すのかとの質問に対し、「そんなものではない」と応じ、「もう1個ヤフーを作るぐらいの価値があると思っている」と話していた。
今の株価の数倍上昇を狙う
宮川社長は、就任と同時に公表した200億円規模の自社株買いについて、4月23日に購入が終了し、平均取得価格は1435円だったことも明らかにした。短期的には保有株に含み損が発生している場面はあるものの、「10年は社長を続ける気概」でその間は売却する意思はなく、今の株価の数倍上昇を狙っていきたいと述べた。
ソフトバンク宮川社長、200億円規模の自社株を市場から取得へ
同社はこの日、アジア9カ国で事業展開するマレーシア通信大手のアシアタ・グループと資本・業務提携すると発表した。アシアタの持つ営業や顧客支援体制を活用し、デジタルマーケティング事業のアジア展開を加速させるのが狙い。宮川社長は、引き続き海外企業と提携して自社の事業成長を目指す考えを示し、「年間400億-500億円ぐらいは投資できる余力を持ち、予算化している」と話した。
ソフトバンクがマレーシア通信アシアタと資本業務提携、デジタル領域
今期営業利益見通しは0.4%増
ソフトバンクが同日発表した今期(22年3月期)の営業利益見通しは前期比0.4%増の9750億円となり、市場予想の9936億円を下回った。スマートフォンを扱うコンシューマ事業で料金値下げの影響から減益を見込む半面、クラウドサービスなど法人事業では2桁の増益を予想した。
配当については1株当たり86円と前期比横ばいを予想し、配当性向は80.6%となる見通し。
今期業績計画 |
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発表資料によると、変異株を中心とした新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、法人事業では顧客のデジタル化推進需要を背景に前期比19%増益を計画。ヤフー事業は、LINE子会社化に伴う無形資産の償却を見込む半面、コマース事業の成長から0.2%増益と予想している。
一方、コンシューマ事業はスマートフォン契約数の増加を見込むものの、携帯電話料金の値下げが足かせとなり、2.5%減益と見込んだ。宮川社長は会見で、携帯値下げの影響は「年間700億円のインパクトがある」と説明した。
1-3月期(第4四半期)営業利益は1292億円と前年同期に比べ11%増えた。通期(21年3月期)ではコンシューマや法人、ヤフー、流通など全事業が増益となり、前の期に比べ6.5%増の9708億円となった。
1-3月期業績 |
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