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クルーズ船集団感染、日本政府に内外から批判-防止策「不十分」と米

  • 韓国は外国人乗客の入国を拒否-「船内な悲惨な状態」と国内専門家
  • 乗員・乗客の健康確保に最大限配慮-菅官房長官

横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号で500人を超える新型コロナウイルスの集団感染が発生したことで、日本は感染を拡大させる最も危険な地域の一つと世界で位置付けられようとしている。同船でのまん延防止策に関して、日本政府の対応に批判の声が上がっている。

  日本国内の感染者数は18日段階で74人で、中国本土以外ではシンガポールとほぼ肩を並べる人数だが、クルーズ船感染者はこれには含まれていない。同日までの感染者542人を加えると国内感染者数は一気に膨れ上がる。

  厚生労働省は14日間の健康観察を終えたとして症状がなく、陰性が確認された乗客の下船を認め、19日は約500人が下船。共同通信によると、下船した乗客はバスで横浜駅など複数のターミナル駅に移動、帰宅の途に就いた。感染者と同室だった人などは、健康観察期間が継続する。

Passengers Disembark Cruise Ship After Quarantine Ends In Japan

下船する「ダイヤモンド・プリンセス」号の乗客

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Getty Images

  こうした日本政府の対応に対し、米疾病対策センター(CDC)は18日、船内隔離について、リスクは現在進行中だとした上で、日本政府の措置は「船内感染を防ぐには不十分だったかもしれない」との判断を示した。CDCは同船の乗客と乗員に対する米国への入国制限措置を講じるとともに、「船内に残っている乗客の中にさらに陽性が確認されるケースがあるかもしれない」と指摘した。

  韓国の保健当局者も19日の定例会見で、同船を下船した乗客について、韓国人以外の入国を禁止する方針を明らかにした。韓国外務省を通じて乗客名簿の入手を目指す方針だ。

  同船では乗員・乗客に加え、検疫官や厚生労働省職員、災害派遣医療チーム(DMAT)に参加した看護師のほか、同船から患者を搬送した救急隊員の感染も確認されている。

国内の専門家からも批判

  船内の感染拡大防止に向けた政府の対応については、日本国内の感染症対策の専門家からも疑問の声が上がっている。神戸大学の岩田健太郎教授(感染治療学)は医療従事者らへの二次感染を防ぐ管理が不十分だったと18日に公開した動画の中で批判。専門家の視点から見ると「超非常識なことを平気でやっている」と述べた。

  岩田氏は18日、DMATの一員として乗船。船内はウイルスが全くない安全なゾーンと、いるかもしれない危険なゾーンが区別されておらず、「熱のある人は普通に歩いて医務室に行くというのが通常で行われている」と指摘。廊下で医療従事者と患者がすれ違う場面にも遭遇、船内の状況は「悲惨な状態で心の底から怖いと思った」と語った。 

  加藤勝信厚労相は19日の衆院予算委員会で、「船内には感染症の専門家が常駐している」と述べ、専門家から「逐次いろいろな指摘をいただきながら対応させていただいている」と説明。菅義偉官房長官も会見で、船内での感染拡大防止に向け「適切に対応してきている」とし、現在は「乗員・乗客の健康確保に最大限配慮」した措置を取っていると語った。

  2月3日に横浜港に入った同船には50以上の国・地域から乗船・乗客計3711人が乗船していた。すでに米国人約300人が同国のチャーター機で帰国。韓国も大統領専用機で希望者を出国させた。オーストラリア、カナダもチャーター機の運航日程を調整中で、イタリア、イスラエル、英国、香港、台湾も航空機を派遣する意向を示している。

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